第13工程 「くそぅ、桔梗に良い所を取られた」
さて、カクバッタ長老からクラップス星人の野望を聞かされた、モデリング部一同。
そんな爆弾発言を投下していった長老は、亀山先生が送り届けてくるということで、部室では、部員達が今後の作戦会議を始めました。
楓原部長がホワイトボードに【今後の対策について】と書き込み、トントンとペンでホワイトボードを叩きます。
「さて、どうしようか」
一同、手を顎に当てて、ウーンと悩むこと10分ほど。
「はいはーい!」
最初に手を挙げたのは、宮前妹。
「はい、花梨さん」
指名された宮前妹は勢い良く起立します。
「こうなったら、敵陣にどどーんと奇襲を仕掛けるとか」
ま、まさかの敵に攻撃を仕掛けるパターン。流石、宮前兄妹の片割れ。いう事の規模が違います。
「敵陣、何処にあるか分かったら苦労しないですよねぇ」
あ、そっか。と宮前妹は、あっさりと着席します。
「提案というか、素朴な疑問なんだけど」
おーっと、此処で三琴君が手を挙げます。部長から名前を呼ばれ、立ちます。
「どうして、あちらは、クレポンの真のレシピを科学者が持っているのを知っているのだろうか」
「あ、言われてみれば」
三琴君の疑問に静流副部長が頷きます。
「僕達はクレポンを使っているから知っているけど、相手方は存在自体知らないだろうし。もし、他の星の奴らから聞いたとしても、真のレシピのことまでは知らないはずだ。僕達もその存在を今さっき知ったばかりだし」
「つまり、クレポンを作っているところに、クラップス星人の内通者がいるってこと? なんだか、ミステリーみたいだわ」
「もしくは、科学者はもう既にクラップス星人に捕らえられていて、真のレシピの存在を知ったけど、科学者の手元には無くって探しているとか?」
「それなら、未だに科学者の消息が掴めていないのは理解できる……」
「でも、それなら……」
三琴君の疑問に、話が白熱し始める高3軍団。他の面々は、わけも分からず置いてけぼりを食らっています。
僕はちゃんと理解出来ていますからね。お三人さんの言っていることは。
簡潔にまとめると、クレポン=宇宙スタンダードってことですよね!
「いやいや、簡潔に纏めすぎだろ。科学者のくだり、全部すっ飛ばしてるじゃないか」
おや、三琴君、ナイスツッコミです。会話に付いていけなくて、放心状態になっていたのかと思っちゃいました。
科学者さんやレシピのことですが、そんなに重要なモノなら、肌身離さず持っていると思いますよ。レシピなんて、金庫とかに入れてもし燃えたら一大事ですよ。
「言われてみればそうだよな。ということは、まだクラップス星人もターゲットを見つけていないと見ていいのか」
そう思って大丈夫だと思いますよ。あくまで僕の勘ですけど。
「そういえば、長老、結構、“真”ってところに力いれてたねー。なんでだろ」
今度は宮前兄が発言を開始します。
「レシピや設計図って大体、企業秘密でしょ? 今回は国が動かしているから、国へは公開されているとしても、他のところには見せないでしょ、普通」
宮前兄の発言に、周囲は驚いたようで、口をあんぐりさせています。
「ん? どうしたの?」
宮前兄は、いささか不思議そうに首を傾げます。
「宮前兄貴の方が、まともなことを言っている」
山菊先輩は目を見開いたまま微動だにしません。
「桔梗は家では結構、こんな感じだよー。えっへん、すごいでしょー」
宮前妹は、自慢げにそうに胸を張ります。いえ、褒めたのは貴方じゃなくて、お兄さんのほうですよ。
一方、宮前兄のライバルを自称している塩原君は、悔しそうにハンカチを噛みます。
「くそぅ、桔梗に良い所を取られた」
彼にスポットライトが当たる日は……、当分なさそうですね。
「レシピのくだりは、先生に政府へ問い詰めてもらうとして、他に何か意見ないかなぁ」
「じゃあ、あともう一つ」
再び、三琴君が手を挙げて立ち上がりました。もしかして、三琴君、出たがりですか?
「いや、違うし。ふと思ったことなんですけど、あの発射台って必要なんですか?」
三琴君の発言により、場の空気が凍りつきます。
「よりにもよって、それを、言っちゃうかぁ……」
楓原部長は重いため息をついてうな垂れます。
「モデリング部のタブーを簡単に口にするなんて、ルーキー君、恐ろしい子っ!」
「いや、だって、発射台無かったら、出動が楽になるだろうと思って」
あまりの重苦しい空気に三琴君はオロオロしながら答えます。こういう三琴君の姿も珍しいですよね。
「発射台を使うのは、司令室の場所を敵に悟られない為なんだ。あと、もう一つ、重大に理由があって……」
深刻そうに、部長が口を開きます。一体、どんな重大案件が隠されているのでしょうか?
「クレポンはドアを開けられない」
え?
「は?」
え、一体どういうことですか、クレポンがドアを開けられないって。
まさか、クレポンに重大な欠陥がっ!
「クレポンにドアを開けるように命令しようにも、自分達がどのようなプロセスでドアノブを回しているのかが上手く脳内で表現できないんだ」
あー、操縦者のコントロール系の問題でしたか。なんとなく、その歯がゆさは分かるような気がします。
「だから、発射台から出動させるようにしているんだ。その方がロマンもあるし」
ですよね! やっぱり、ロボットなんかの出動は発射台からの発射ですものね!
「なんで、そこで白熱してるんだよ。まぁ、ドアが開けられないなら仕方ないなぁ……。後は、カプセル装填スピードの向上とクレポン増産が今後の課題という所ですかね」
おー、最初はあんなに入部を嫌がっていた三琴君がまじめに今後について考えている。母さん、三琴君が立派になって嬉しいわぁ……。
「お前、母親違うだろ。ということで、部長……」
「ん? なんだい?」
「コレから、オアシスに引きこもってきますので、邪魔しないで下さいね。ついでに、夏水も邪魔したら、コロスから」
三琴君はニッコリと笑うと、瞬く早さで作業室へと向かっていってしまいました。
それにしても、怖っ。あの、真っ黒い笑みを未だかつてみたことがあったでしょうか。否、無い!
「アレが、パンダパワー……」
そういう部長さんの顔は青ざめていました。
【次回予告】
三琴君の邪魔をしないように省エネモードです。
さて、三琴君は一体何をしているのでしょうか。
それは、次回、明らかにされるとかしないとか。
次回、第14工程。お楽しみにー
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