出会う

「はあ、はあ・・・」


城への戻り方なんて分らない。

でも、今は自分の心だけを信じて前に進んでいた。


私の心と同調するように、手の中の石は輝きを増していく。




走り続けると、ようやく城の全景が見えてきた。



その時だ。



大きな爆発音とともに、城を守っていた何かが破壊されたように感じた。


私は速度を上げ、城の入口が見えてきた時。

見覚えのある影が、私の前に立ちはだかる。



「これ以上は行かせられない」


「・・・そこをどいて下さい、海翔さん」



いつかは気が付くだろうと思っていたが、予想よりも随分早い。

でも、ここまで来た以上私も引くわけにはいかなかった。



「【エルツ】の使い方も分っていない奴を、戦場に連れていくわけにはいかない、と言っているんだ」


「何の力も持っていないかもしれない。

でも、今行かなきゃ後悔する気がするんです!


・・・行かせてください、海翔さん」



互いの強い視線が交錯する。

譲れないものがある、それはどちらにも。


海翔さんが腰にある剣に手を持っていくのが分かる。

剣を抜いてでも止めなければならない、そう思っているんだろう。


だが、私の考えは予想外の形で裏切られる。






「・・・・・・わかった」





溜息をつきながら、剣に延ばされた手で頭を掻いた。



「お前にも譲れない思いがあるんだろう?

【エルツ】が光り輝いているのがいい証拠だ。」



呆れながらも私の手にある物を見て、苦笑した。



「・・・お前が望むように動け。

【リュミエール】が導くままに。


お前の事は、責任もって俺が守ってやる。

だから安心して、前だけ見てろ」



そういって笑顔を見せた海翔さんに、私の心臓が大きくはねた。


――「お前の事は俺が絶対守ってやる!

だから、お前がやりたいようにやればいい」


――「うん!!」


無いはずの記憶の中に見えた、海翔さんの笑顔。

今よりも少し若い、でも変わらない純粋な笑顔だった。




「はい!!」



私も笑顔で彼に返事をする。

見えた景色と同じように。









「これは・・・・・・」


「思った以上にひどいな」



城の入口には多くの兵士たちが倒れていた。

見た目ほど外傷は酷くないようだが、それでも身体的ダメージは大きい。



「このやり方・・・、フェルか」



兵たちの様子を確認しながら、海翔さんは聞いたことのない名前を出した。



「フェル、さん・・・ですか?」


「ああ、今王様たちが戦っている相手の中の一人に、体術に優れた奴がいる。

ま、勿論剣の腕前も相当だけどな」



兵たちの応急処置だけを行い、私たちはさらに奥へと進んだ。

城の中へ行くほど、爆発音が大きくなり、様々な色の光が見える。


私は進みたい方向を言い、海翔さんを先頭に城内を駆けて行った。



「リーヴァ、本当にこっちに行きたいのか?」


前を走っていた海翔さんが速度を緩め、私に聞いてくる。

その原因は、少し先に見える光のせいかもしれない。


「はい、あそこに・・・


王様がいる場所に行きたいんです」


前方に見えるのは、黒と白の光。

今まで見てきたどんな光よりも、強い閃光。


「あんまりおススメしないけどなあ・・・。」


「危ないことはしません。

でも、今はこの戦いを止めないと!」


「うーん・・・。

この月蝕もあと少しで終わるんだけどなあ・・・」


考え込みながらも、私の願いを聞いてくれる海翔さんは、本当に騎士のようで。

後姿を見ていると、また景色がうかんでくる。




――「止めないと!」


――「待て!!」


――「大丈夫!だって私の事は海翔が守ってくれるんでしょ?」



城内を走りながら、似たような会話をしてる。

この映像も、前に強い光が、黒と白の光があった。

頭の中の風景と、私の現実が合わさっていく。





右手に持っている石が、今まで以上の光を放ち始めた。







強い、強い、金色の光が。







――「お兄様!!!!」









出逢いは必然。

この世に偶然なんて存在しない。

あるのは必然のみ。


巫女運命に翻弄された一人の気高き少女は、いくつもの悲劇といくつもの喜劇を乗り越えて、再びかの者たちと出会う。


運命は残酷に・・・。

でも、ほんの少しのキセキを加えて。










全てに飲み込まれた2人の王と鍵を握る一人の少女が、




遂に揃う。











「なんで・・・、



リア・・・・・・なのか?」









「ごめんなさい・・・。










許して、

















お兄様・・・・・・」





















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Licht Weg-キセキの先に- 玖蘭朱音 @Reina

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