ざわめき

コンコン



誰かが扉をノックする音が聞こえる。

鍵はかかっていないが、おそらく礼儀としてやってくれたのだろう。


私は起き上がり、ベッドから立ち上がろうとした時だ。


「っ・・・!」


足がふらつき、バランスを崩す。

床にぶつかる、そう思った時だった。


「おっ、と」


誰かが素早い動きで私を掬い上げた。


「大丈夫?」


白を基調にした騎士服を優雅に着こなし、同じく白のシルクハットを被っているのは、


「九十九・・・さん?」


さっき雷炎さんを迎えに来た九十九さんだった。













「さて、じゃあまずはこれからのことだね。」


九十九さんに助けられた後、私はベッドの上に戻された。

彼によると、私は全身の筋力が落ちているらしく、今はまだ歩くことさえ無理な状況らしい。


そこで、これから私がココで生きていくために、色々なことを教えてくれるということだった。



「まずは君の立場から。


今の時点で、君はこの城の客人扱いになってる。

療養しないといけないし、君の立場を考えるには、色々と知りたいこともあるからね」


私は頷く。

よく分からないけど、とにかく休め、ということだろう。


「そこで、まず君の名前なんだけど・・・」


何か思い出した?と九十九さんは私に問いかけた。

私はさっき海翔さんからもらった名前を言う。


「リーヴァ・・・です」


「リーヴァ?」


九十九さんの問いかけに私は頷くと、彼は考え込むようにして、そっか、と言った。

彼の様子に首を傾げていると、私の様子に気が付いたのか、申し訳なさそうな顔をした。


「・・・・・・つけてくれたのは、海翔だよね?」


私は深くうなずいた。

そして彼は再びそっか、と口にしたのだ。




「あの・・・」


空気に耐えられなくなり、私が一言口にすると、九十九さんは慌てて話題を振ってくれた。


「ごめん、つい考え込んじゃったよ」


そういって彼は今後の予定と、私の記憶探しについて教えてくれた。


「君・・・リーヴァの体調がよくなり次第、まずは城下に降りてもらう。」


言い直したのは、私が顔をしかめたからだと思う。

海翔さんからもらった名前で呼んでほしかったんだ。


「もちろん護衛はつけるよ。

身の回りの安全とかは気にしなくてもいい」


ありがとうございます、と返事をすると、彼もうん、と答えてくれた。


「神彩華に住んでいたか分からないけど、雷榎が言うには大丈夫だろうって」


雷榎には何でも見えてるからね、と九十九さんは言った。


私のことを少し寂しそうな目で見てきたあの王様は、いったい何を背負っているんだろうか。



何でも見える・・・そこに違和感を感じたのはどうしてか。



「あの、護衛って」


気が付いてはいけないことのような気がして、私は話題を変えた。


なんだか胸がザワザワする。

これ以上、踏み込んではいけない気が・・・する。


私の気持ちを分かったのか、九十九さんは微笑んだ。


「海翔だよ」


その台詞に棘を感じたのはどうしてだろう・・











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