第十五話 ただいま
光達の活躍により、王都は無事守られた。そして、偽りの世界に居た者たちが全員、ユーリの元へ招集される。
「皆、お疲れさま。エジステ・オーラスの影響でとんでもない事になった上に、フィアンマ・カラミタまで襲撃してきたせいで、大事なことなのに後回しになっちゃったけど…記憶を復元するわね」
ユーリが手に魔力を込める。そして、皆を包み込んだ。
「ふーっ…やっと記憶が戻ったぜ」
光が目を開ける。
「おー記憶戻ったが…てか光は平気か?」
七夜が心配になる。冷酷な光に逆戻りしていて欲しくない。
「大丈夫だぜ。記憶は戻ってもオレはオレだ。」
「良かったぜ…」
「ってあなた、光さんなんですか!?」
記憶が戻ったステラが素っ頓狂な声を上げる。
「そういうお前はステラ・ソレイユ、だろ?記憶通りクリムゾンレッドのショートか」
「そうですよ?ってそんな事より、光さん目がオッドアイになってます!?」
「パルトネの七夜と契約したら、どうやらオレはキャラが変わったらしくてな」
「今の光さんの方がいいですっ!」
ステラは以前の光を思い出していたが、別人みたく冷たく怖かった。しかし、目の前に居るのはとても親しみやすそうな光だ。
「私もステラちゃんと同じ意見よ♪」
彩が話に加わる。
「姉貴、もう大丈夫か?」
光は姉が心配で仕方ない。弟だから当然といえばそうだ。
「うん、もう大丈夫。姫華もきっちり回復したし、この通り影月もね」
彩の背中には大太刀が背負われている。光も記憶にある影月そのものだ。
「光ーっ!」
可愛らしい声でレイが飛びついてきた。
「ちょ!レイ!あぶねーな…」
なんとか抱き止める。
「私のこと覚えてる…?」
「勿論さ。レイ・アイリスだろ?」
「うんっ!」
綺麗な金色の髪。何度見てもレイの髪は美しい。
「そういうレイはオレを思い出したのか?」
「思い出したよっ…でも、前の光は怖かったかな…」
「そりゃ済まなかったな。それと、オレは良いヤツっぽくなったけど、クソ親が嫌いなのは変わってないからな」
何があろうと光の中では親を許せない。虐待され続けた日々、その記憶は消えはしないのだ。
「私のお母様も…嫌い…?」
レイは光の事情を理解しているつもりだったが、母であるユーリの事はできれば好きになって欲しかった。
「オレの中で親という存在は…自己満足の為に子育てして、思い通りにならなきゃ全てを否定し虐待してくる…まさに災厄でしかない。ドラゴンなんか正直、怖くもなんともない。オレは…親という存在を…好きにはなれないと思う…」
光もレイの気持ちは汲んであげたかった。それでも、どうしても、無理なものは無理だ。
「そっか…だったら、いつか好きになってねっ」
ポジティブシンキングはレイならでは。
「そうだな…過去は変えられなくても、未来は変わる可能性があるもんな」
光も随分と前向きになっていた。
「光さん…変わりましたね」
物静かな声で話しかけてきたのはリリィだ。
「え…おまえ…リリィか!?」
見た目は確かにリリィ・アイリスだが、雰囲気と言葉遣いがまるで違う。
「ええ。リリィ・アイリス、レイ姉さまの妹ですよ?」
「言葉遣いが変わりすぎてるだろ…」
「どうやら…昔の母様の言葉遣いが移ったらしくて…」
「なるほど…ユーリは昔、割とお嬢様言葉だったのか…」
「ちょっと!光!どーいう意味ですか!」
ユーリが割り込んできた。
「いや、そのままの意味だ。てか、今の言葉遣いのほうがオレは好みだけど?」
「はぁ…まぁ実は…女王の仕事がしんどくて…もういちいち取り繕うのも面倒ですしー…」
まるで家事に追われる主婦のような言い草だ。
「そりゃお疲れさん。てか、オレの魔力に関しては何か分かってるのか?」
「あー…じゃあそこら辺の話はカレン、お願いします」
丸投げした。
「では説明しましょう。光君の魔力は0ではなく零です。つまり存在しないのではなく、我々の手段では計測できていないという事です。ですが…戦車というものを見る限り、光君は確実にスレイヤーですね」
「おー私とおんなじだーっ」
彩が喜ぶ。
「ふっ…さすがIS-3とObject704だな…!」
好きな戦車で活躍できるというのはやはり戦車乗りとして嬉しい。
「それと、皆さんの記憶は戻っていますが…エジステ・オーラスの影響が消え去ったとは言い切れません。また、全員が竜狩人として、バスター以上の実力を持っています。そこで、王立魔導学園に新たに特科クラスを設け、皆さんを受け入れる事にしました。学年などはなく、主に他の生徒の指導などをお願いする予定です。」
「なるほどな。そいつはいいかもしれねーな。サバイバーは集めとくほうがいい」
光が直ぐに納得する。
「明日は休息日になっているので、明後日から登校お願いしますね。私からは以上です。」
説明がオリエンテーションらしくなっていた。全員、特に反論などもない。
「じゃあ、彩ちゃんとステラちゃんは親衛隊の方お願いね。レイとリリィと光さん、紫音さんは少し残って。カレンは学園の手続きをお願いね。」
ユーリが各々に指示をする。その場は解散となった。
光と七夜、紫音はレイ、リリィと共にユーリの部屋へ案内された。女王の部屋らしく豪華である。
「光さん」
ユーリが話しかける。
「なんだ?」
「あなたの記憶を覗かせてもらいました。壮絶な過去だったようですね…」
「まーな…」
「やはり…許せませんか…?」
「ああ」
「それと…紫音さんと恋仲なのですね…」
「それは今大事な話なのか…?」
「はい。光さんは十六才で紫音さんが十七才ですから、この国では結婚できる年齢なのです。結婚なさって、王族へ入られてはどうかなと…」
いきなりとんでもない提案だ。
「待て…オレと紫音が結婚するという理屈は理解できた。だがそこからなぜ王族へ入るって話になるんだ…」
「おふたりとも壮絶な過去を歩んでいますから…少しでも癒しになればと…王族の特権で気に入った者を王族へ編入する事が出来るんです。ただし、条件は夫婦であること。王位継承権はかなり下位になりますけど…」
「なるほど…家族ってわけか…」
「私は光と一緒なら何でもいい…」
紫音は光に一任する。よって、この提案は光に委ねられた。
「ねぇ…光…」
レイが悲しげな声で話しかける。
「ん…?」
「私ね…光が好きなの…偽りの世界で偽りの母様に対抗しようとする光がすごくかっこよかった…だから…結婚して一緒になれればって思ったんだけどね…先越されちゃったから…でも家族にはなりたいよ…?」
複雑な思いがある。でも光には紫音のほうが良いのかもしれない。でも諦めたくない。葛藤していた。
「思ったんだが…偽りの世界のユーリと本物のユーリ、違い過ぎだろ…普通に、優しいし」
光が自分の記憶と照らし合わせる。
「多分…偽りの世界には母様は存在しなかったと思う。あたかもいるかのように記憶が操作されてたと思うの…」
「エジステ・オーラスのやつ…どんだけだよ…」
「元の世界に戻って来て、記憶が戻って…やっと母様を思い出せたんだ…光のおかげだよ?」
「レイ…」
母親と娘の感動的な再会を支えたのは、親という存在が嫌いな光だった。それに気づき言葉に詰まる。
「根は優しい光…でも、どこか癒しが欲しいんじゃないかなって…」
レイが優しい声で話す。
「…オレは…昔からずっと虐待漬けだった…でも周りの奴らは親と楽しそうな時間を過ごしていた…羨ましかったさ…オレだって愛されたかった…甘えたかった…でも、現実は残酷過ぎて…いつしかそんな事を考えるより、どうやって親に復讐するかだけ考えるようになった…自殺しようと思うほど辛かった事もあったけど…復讐心がオレを奮い立たせ続けてきた…」
絞り出すような声で話す光。
「もう…そんな辛い思いしなくていい…」
レイが光を抱きしめた。敢えて紫音は止めずにいた。今の光には癒しが必要なのだ。
「参ったなぁ…レイにそんな事言われたら…無視できねーだろ…放っておけないぜ…」
「だから…家族になろ…?」
「…ちょっと待ってくれ…」
光は思考をめぐらす。そして何かを閃いた。
「なあ、ユーリ」
「なんですか…?」
「王族ってのは一夫多妻認められないのか?」
まさかのむちゃくちゃな質問だ。でもそれを聞いたユーリは驚くどころかむしろ笑顔だ。
「いい質問ですよ…実は認められているんです♪」
両手を合わせて笑顔で答える。
「さすが異世界だぜ…まったく…」
光は嬉し泣きしていた。
「光…?」
レイが心配する。
「紫音…レイ…俺と結婚してくれ」
「…はいっ」
「光となら…♪」
レイと紫音も幸せそうな顔で受け入れる。
「いやー…アタシのマスター、すげーな…」
七夜が驚く。
「別にいいだろ…俺も死ぬ前に一度くらい愛されたい…大切にされたい…」
光が涙ながらに話す。
「…分かってるさ。アタシも光が大切なんだぜ?」
「ありがとよ…」
七夜はパルトネとして、光の事を守る決意を固めていた。
「…式は明日挙げてしまいましょ♪」
ユーリが提案する。
「そうだな…早い方がいい」
光も同意する。
「わわ…私すごく恥ずかしいよ…」
レイが顔を真っ赤にしていた。
「姉さま、しっかり!」
リリィが励ます。
「明日が楽しみ…」
紫音はいつも通りの冷静さだ。
「…とりあえず、休んでいいか…?なんかすげー疲れてるし…」
光の疲労は限界だった。それもそのはず、砲弾の装填で半端じゃない疲労が蓄積していた。
「じゃあ、光さんと紫音さん、レイが暮らす部屋に案内させるわね。式の手はずはこちらで全て整えるから、今日はゆっくり休んで。」
ユーリが使用人に三人を案内するよう指示した。
光と紫音、レイは広々とした豪華な部屋へ案内された。本当は一通り見て回りたいのだが、光だけでなく全員が強烈な眠気に襲われていた。
「…わりぃ…オレ寝る…」
光がベッドに倒れこむ。
「光と寝るのぉ…」
レイが抱き着く。
「私も…」
紫音も抱き着く。三人ともすぐに寝付いてしまった。ようやく、ゆったりと休める時が来たのだから無理もない。
翌朝、光が一番先に目覚める。寝ることすら許されない生活をしていたせいか、目覚めは物凄く良い。
「…紫音とレイがそばに居てくれるんだな…オレはこっちに来てやっと幸せを見つけたぜ…」
しんみり呟く。
「ひかる…おきてたの…」
目を擦りながらレイが起きた。寝ぼけ顔がすごく可愛らしい。
「おはよう、レイ」
微笑みながら頭を撫でてあげる。
「えへへ…♪」
守りたい笑顔がそこにあった。
「レイ…」
チュッ…
光からキスする。
「んっ…」
レイは何も抵抗せず受け入れた。
「大好きだぜ」
抱きしめながら囁く。
「私も…今朝の光は積極的だね…」
キスされた上に抱きしめられて、少し蕩けてしまうレイ。
「そうかもな…」
「光…私の事忘れないで…」
紫音が急に起きた。
「分かってるさ。こっち向きな?」
静かに促す。
チュゥ…
優しく口づけした。
「私だって光が大好き…」
「私もだからっ…」
紫音とレイが張り合う。
「お前ら仲良いなぁー」
そう言う光は笑っていた。その笑顔が二人にとって守りたいものだ。
「ねえ…紫音」
レイが真剣な眼差しで口を開く。
「なに…?」
「私も紫音も光が大好きでしょ?」
「愚問…」
「だったら…私と紫音もお互い好きでいなきゃね…?」
「それには納得…」
二人とも根の優しさからお互いを嫉妬したりしない。むしろ、大好きになっていたのだ。
「紫音…」
「レイ…?」
レイが静かに顔を近づける。
ちゅっ…♪
紫音にキスした。
「レイ…ずるい…」
…ちゅっ
紫音もお返しする。
「おいおい…まさかの百合かよ…」
光が茶化してきた。
「光は黙っててー」
「静かにしてて…」
怒られてしまった。
「おはようございます。起きていらっしゃるようですね。式の準備があるので、ご準備願います」
使用人が声を掛けてきた。
「おっと、今日のメインイベントだ。準備すっかー」
光は手早く身支度を始める。レイ、紫音も急いで支度する。
「そうだ、七夜。アレ頼むぜ」
「任せときな!」
七夜に何かを頼む光。その後、三人はユーリの元へ向かった。
「えーと光さん、紫音さん…良いのですか?」
ユーリが心配そうに確認しているのは、王族籍へ入る際の二人の氏名だ。
「え?問題あるか?」
「私はこれでいい…」
というのも、二人とも元の苗字をミドルネームとして残さない事にしていたのだ。
「規則上は問題ないですけど…」
「オレは氷月なんて家の名前は大嫌いだからな」
「私も青蓮院の名前なんて捨てて構わない…」
息ぴったりの二人。
「いやぁ…光が王族に入るって事は私もなんだよねー」
彩が口を開いた。
「別にいいだろ、姉貴」
「それはいいけど、こっち来て早々に嫁貰うとはねー…しかも二人って…」
流石に姉として驚く。
「好きって感情をやっと思い出せたんだぜ?いいだろ別に」
「そうだね…光がちゃんと光になってくれれば私はいいよっ」
姉として見守る決意を改めて固める。
「では、式場へいきましょうか」
ユーリが席を立った。関係者が移動を始める。
結婚式場の参列席にて、
「彩さん…光さんって何者なんですかっ…」
ステラが耳打ちしてきた。
「え?私の弟だけど?あ、ちゃんと血は繋がってるわよ?」
「そうじゃなくてですね…いきなり王女と結婚とか…あと、異世界からいらした方も一緒に結婚とか…」
ステラとしては余りにも急展開過ぎて付いていけない。
「ま、本人達が納得してるしいいんじゃない?」
「は…はぁ…」
彩としては光達が幸せになれるなら構わない。
「あ、入場よっ」
式場の扉が開く。王宮音楽隊の演奏の中、光と紫音、レイが入ってきた。そして女王の前に進む。王族の結婚式は王が取り仕切るしきたりだ。
「氷月光、あなたは、王族へ入る覚悟がありますか?」
静かな声で尋ねるユーリ。
「当然だ。」
「では…青蓮院紫音、あなたは?」
「当たり前…」
二人の意思を確認した。
「それでは…ヒカル・アイリス、あなたはシオン・アイリスとレイ・アイリスを愛し、生涯護ると誓いますか?」
王族籍上の名前で問う。
「誓うさ…」
そう言った瞬間、
ズドォォン!!
轟音が響く。全員が振り向いた。
「そこの二人は光が守るって言ってるけどな、アタシを忘れないでくれよ!」
IS-3で壁をぶち破って入ってきたのは七夜だ。
「つまり、そういうことさ。オレは七夜と契約し、戦車を扱う竜狩人だ。その力を以て、紫音とレイを守り抜く!魔力は零だが0じゃないんだぜ!そして、二人の旦那として一生、死んでもあの世で愛し続ける!」
高らかに宣言し、紫音とレイを抱きしめる。
「ふふっ…よろしい♪末永く幸せに暮らすのですよ♪」
ユーリが笑顔で祝福する。その場は拍手喝采となった。
式が済み、光と紫音、レイはユーリの部屋へ来ていた。
「素晴らしい宣誓だったけど…壁直すの大変よぉ…」
ユーリが苦笑している。IS-3がぶち破った壁は現在、修復作業中だ。
「まぁまぁ、母様♪」
レイがニコニコ笑ってなだめる。
「光らしいからいい…♪」
紫音も笑顔だ。
「二人はすっかり光に夢中ね…」
既に家族、身内なのでユーリの態度もくだけている。
「オレは…これで王族なわけだな」
光が静かに口を開いた。その表情はどことなく複雑だ。
「そうなるわねー」
ユーリは既に察しているようだ。
「ユーリ王は…オレの義母さんなんだな…」
「そうよー…?」
光から見てユーリはとても優しい、甘えたくなる女性に見えている。だからこそ、義母になった事でこみあげてくるものがあった。
「かあさん…」
年甲斐もなく大粒の涙がこぼれる。
「…おいで、光」
ユーリが両手を広げる。
「…かあさん…オレは…オレは…」
涙ながらに抱き着く。ユーリはそっと抱きしめた。紫音とレイも涙が出ていた。光の辛さを知っている者だからこそだ。
「辛かったでしょ…もう大丈夫よ…」
「かあさん……」
光はユーリに抱きしめられながら大泣きした。それは今までの辛さを耐え続け、溜め続けた涙。辛さや悲しみをようやく思い出した光の人間らしい姿だ。
「私は…光のこと大好きだから…ね…?」
頭を撫でながら、微笑むユーリ。
「なあ…かあさん…」
涙を拭く光。
「なぁに…?」
「ただいま…」
光にとって帰る場所、それがようやく見つかった。
「うん…おかえりなさい、光♪」
ユーリがにこっと笑う。
「母様っ…!」
「ユーリ母さん…」
レイと紫音も抱きつく。
「あらあら…あなたたちってば…」
まるで幼い子供のように甘えた。とても幸せな癒しの一時を過ごす。
その日の夜、光と紫音、レイは部屋で一緒に居た。
「明日から学校なわけだが…重大な問題がある」
重苦しい口調で口を開く。
「え…?どうしたの?」
レイが驚く。
「そもそもオレも紫音も王都アイリスの事全然知らないんだが」
こちらに来てから、まともに王都の情報などを仕入れていない。
「それなら大丈夫だよっ。私が教えてあげるし、多分明日は皆で王都巡りすると思うしっ」
「王都巡り?」
「親衛隊と一緒に行動するって、ほら予定表に書いてたでしょ?」
「あー…わりぃ…オレ、学校の連絡とかプリントとかまともに目を通したことないんだった…」
学校嫌いの癖が祟る。
「光ったら…」
レイが苦笑する。
「とりあえず、オレ寝るわ…まだ体シャキッとしねーし…」
疲れが抜け切っていないようだ。直ぐにベッドに入った。
「光…」
レイが布団に入ってきた。
「レイ…おま…」
下着のままのレイに光は驚く。
「いいでしょ…?もう夫婦なんだし…」
「そうだけどな…」
そのまま抱き着いて来た。胸が当たる。レイの身体はとても温かい。
「光…私も入る…」
紫音も入って来た。案の定、下着姿だ。
「全く…二人とも…あぁそうだ。こんなタイミングで言うのもなんだが、聞いて欲しい事がある」
光が真剣な口調になる。
「オレ、ここで素敵な家族と出会って、幸せだ。勿論、紫音もレイも守るし愛する。そして…いつか、元の世界のクソ親に…ドヤ顔でお前らを紹介してやる。それがオレの復讐だ。」
穏やかに語った光。
「うんっ…」
「それは名案…」
レイと紫音は直ぐに納得した。冷酷な光だったら絶対にあり得ない結論だ。だからこそ、変化が嬉しい。
「じゃあ…光…いいよね…?」
レイが上に乗っかる。
「私もいいでしょ…?」
紫音も顔を近づける。
「…ああ、愛してやるよ」
その日の夜は今までの人生で一番、幸せで熱い夜になった。
翌朝、お決まりのごとく光が最初に起きる。
「…オレ、生きてて良かったな…ホント」
「光…愛してるよ…」
次に起きたのはレイ。
「私も愛してるから…」
最後は紫音だ。
「俺も紫音とレイを愛してるぜ。てか…夫婦で登校ってスゴくね?」
「いいじゃんっ♪」
「私たちの愛は誰にも止められない…」
今日は登校日だ。
「とりあえず、支度するか…」
光がカバンに色々放り込む。
「光、昨夜はアッツアツだったなぁー」
七夜が声を掛ける。
「別にいいだろ」
「まぁなー?てか、学校の用意しとけよな…」
「前の世界じゃ置き勉してたんだよ…」
正直、光としては登校が面倒でもあった。
「ねー紫音、汗流すし一緒に入ろー?」
「うん…」
レイと紫音はシャワーに向かった。
「そうだ七夜」
「ん?」
「戦車どうしたんだ?」
「あぁ、今は片付けてあるぜ?ただ、王宮にガレージ作ってくれるとか聞いたが」
「そいつはありがたいな」
「これからもドラゴンは来るだろうしなぁ」
「そりゃそうだろ」
これから始まる戦いを見据えるマスターとパルトネ。窓の外に広がる王都はとても綺麗だ。
「んじゃ行くか」
「はーいっ」
「うんっ…」
レイと紫音が光の腕に抱き着く。三人は笑顔で王立魔導学園特科クラスの教室へ向かった。
魔力零の竜狩人 東洞院咲夜 @Sakuya_Higashinotoin
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