第2話 とけないのは誤解
目が覚めたらベットの中。
もちろん夢落ちを考えたけど枕元にいる人形に気づき断念。
誰のベットか考える前に教えてくれた。
「きみの部屋は狭いな」
その通り。でも大きなお世話だ。
「でも落ち着く。私はすきだ」
貶してから褒める。僕は嬉しそうにしたらしい。
「なにが楽しいのだ」
睨まれた気がしたので、神妙な顔をすることにした。
「変わった奴だな」
何度聞いても楽しくない。ようするに異常だと部外者だと言っているのだ。
それほど自分達はマトモなのか。ここにいない幾つかの顔に毒づいた。
そんな僕の心の動きをよそに人形は部屋を鑑賞、いや物色している。
ナイフを持った人形に襲われ、ベットで介抱?されている。
もしかしてナイフはおもちゃでハロウィンの予行演習か。
「何故あのとき笑った」
突然の質問だが答えは牛蛙が鳴いたから。
「恐怖か」
どうやら振り返った時の事を聞いたらしい。
そりゃナイフ握った人形なんて映画の中だけだろう。
しかし下手なこと言うと危ないので安全な言い訳を探した。
無い。あったら高くても買う。
「それとも殺意を感じないほど鈍いのか」
殺意?オウム替えし。無論、心の中で。何故か聞こえたらしい。
「羊でも殺される時は気づく」
淡々と話す美しい人形。
そういえばテレビで見たことある。
しかし実在すると結構付き合いづらいのがわかった。
反応に困るのだ。
そういえばさっきからベットの中。眠たくもないので起き、れない。
体が動かない。
「無理に動かすと神経に障るぞ」
何故ベットに居るのか思い出す。
こめかみに一撃。極悪だ。
そして、もう一つ思い出す。赤いナイフ。思考が停止した。
「何故笑った」
質問ではなく詰問。顔が近い。
「話せるようにはしている」
沈黙もダメ。
僕は思わず秘密の隠し場所を見た。
さっさと処分すればよかった。家族に見られたら幻滅されるか。いや、呆れるだけか。
そしてまたやってしまったらしい。
「何故笑う」
慌てて視線を戻すが今度は人形が視線を外した。
行く先は隠した雑誌がある場所。
「何かあるのだな」
止めてくれ。そんな気持ちが伝わったのか、
「見てはならないものがあるのだな」
と人形は正確に言い当てた。
「そうか」
笑った。確かに人形は笑った。
何もできないまま、それは発見された。
「おい」
笑いと哀れみと呆れをブレンドした眼差し。
そして僕は死にたい。殺してくれ。
「なかなかのものだな」
それ以上は言わないでくれ。
「私が言うのも何だが」
わかっていても聞きたくないセリフもある。
「人としてどうかと思うよ」
生きていくのが辛くなった。
「それでは帰る」
ええ帰ってくれ。
あれ、このまま帰るのか。
いいのか。もちろん僕は歓迎だが。
「お互い話さない。いいな」
もちろん。むしろ、忘れる。
「また」
社交辞令だ。そう思うことにした。
いつの間にかいなくなった人形。
残された僕。というか僕の部屋だが。
そして気がつく。まだ体が動かないことに。
トイレに行きたいんだが。
本当の悪夢は始まったばかりだった。
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