#021 天空揚陸艦、機械獣魔はふたつの虚数魔法を

♯星歴682年 10月 17日 午前6時05分

  アゼリア市北区上空 天空揚陸艦パレイベル艦橋


「クムク副騎士団長機ふくきしだんちょうき、剣を破損!」

「どうしたっ! 何が起きた?」 

 状況を監視していた天空揚陸艦パレイベル艦橋は、その瞬間に騒然となった。鋼鉄の剣を研ぎ直したうえに特殊な硬化魔法を施したにもかかわらず、教導騎士団きょうどうきしだんが繰り出した魔法機械騎士まほうきかいきしたちは苦戦していた。鋼鉄製の剣が全く機械獣魔きかいじゅうまに通じないだけではなく、有り得ないほどに剣の消耗が激しい。


 鋼鉄製の長剣がガラス状に砕けるという異常な事態に、技巧官ぎこうかんらは、ついにひとつの可能性に思い当たった。

 機械獣魔きかいじゅうまが不可視魔法の他に、もうひとつ護身のための魔法を展開している可能性に……


 ラファル技巧官ぎこうかんは、魔法符形解析器まほうふけいかいせききを担当する席を振り返って声をあげた。

「ソニス法符師ほうふし、敵は魔法を二枚同時に展開していると推測されます。条件が複雑になりますが、解析できますか?」

 今回の戦闘に際して、国立公文書館付きの学士であり、フェリム第4期の魔法符形プログラム研究の第一人者である、ソニス法符師ほうふしが招聘されていた。

「うん。大丈夫。頑張ります。その代わり呪符の観測をお願いしますね」

 そう応えた時、ソニス法符師ほうふしの前に展開していた蛍砂表示管けいさひょうじかんには、すでにふたつ分の魔法陣を解析する画面が開いていた。

 ソニス法符師ほうふしは、国立公文書館の魔法機環への上位アクセス権を持っていた。閉架書庫を管理する魔法機環まほうきかんの情報さえもリアルタイムで閲覧可能だった。

 さらに、漆黒妖魔が使う主要な呪符プログラムのパターンについて、膨大な量を暗記していた。魔法符形まほうふけいを研究する学会誌にも、独自研究をまとめた数本の論文を寄稿していた。その成果から、漆黒妖魔が遺した呪符プログラムの解析にかけては、天才か鬼才のどちらのはずと評されていた。

 その技能を買われて、今回、未知の不可視魔法を解析する役目を天空艦隊より依頼されていた。


「ラファル、とっておきのディナーよりも、美味しいご馳走よ。ありがとう」

 ソニス法符師ほうふしは、ぺろりと舌なめずりをして見せた。


 彼女は昨夜、予約で訪れたレストランのベランダ席から、文字どおり飛竜で引っ張りあげられた。こんな緊急事態の最中の出来事だから、まともな説明もなく、飛竜で舞い降りた天空騎士に連れさらわれた。

 それから、徹夜で魔法符形解析器まほうふけいかいせききのセットアップ作業を強いられた。天空揚陸艦パレイベルは魔法機械騎士を運用することを目的とした艦船であり、その任務に、本来、妖魔の呪符プログラム解析は含まれていない。

 そのとき艦橋で稼働していた魔法符形解析器まほうふけいかいせききは、臨時に、ウラシル魔法機械工廠まほうきかいこうしょうから持ち込まれたものだった。

 ラファル技巧官ぎこうかんたちは魔法機械騎士の整備で手一杯だった。魔法符形解析器まほうふけいかいせききの設定作業は、ソニス法符師ほうふしが、差し入れのコッペパンを囓りながら、ひとりで行った。


 やっとのことで予約の取れた人気店のディナーを目の前に残したまま、天空船へ連れてこられた。その代わりに夜食として差し入れられたコッペパンは、冷えて硬くてパサパサしていた。だから、すこぶる機嫌が悪かった。

「私が食べそびれた蟹クリームパスタよりも、上等なものを出さなきゃ、魔法機械工廠の法符プログラムのメンテ、もう、してあげないよ」

 ソニス法符師ほうふしは、そんな感じで一晩中、膨れていた。美味しそうに茹であがった真っ赤なハサミが乗ったパスタは、二ヶ月も前から予約していた。

「じゃんけんをして、勝ったら食べてもいいよってルールで、カニさんと約束していたのよ。私、頑張って勝ったのに……」

 ソニス法符師ほうふしは、ラファル技巧官ぎこうかんとは学生時代からの〈お友達〉だった。戦いの最中にリアルタイムで妖魔の機械獣魔きかいじゅうまが展開した呪符プログラムを曝くという高難度の仕事を依頼する相手に、ソニス法符師ほうふしを選んだのも、そんな縁だった。

「私、ちゃんとグーを出したのよ」

 にぎりこぶしを何度も突き出してみせる不思議系美女を相手に、ラファル技巧官は、にこやかに笑っていた。 

 乱暴な招聘をやらかした主犯、ラファル技巧官ぎこうかんは、しかし、全く悪びれた様子もなく謝罪もまともにしなかった。ソニス法符師ほうふしの大好物がフェリム第4期の呪符プログラム解析と知っていたからだった。


 メモ用紙に猛烈な勢いで走り書きをした。ソニス法符師ほうふしは、それから、瞳を閉じて、くるくると緩く巻いた前髪をいじる仕草の後……

「思い出したっ! これ、十四音位系じゅうよんおんいけいの、デクレッシェンド符形ふけいの……えっと、あれ、あの……」

 ラファル技巧官ぎこうかんは、学生時代から見慣れてきた光景をにやにやしながら見守っていた。ソニス法符師ほうふしが、今度は蛍砂表示管けいさひょうじかん越しに古文書アーカイブ閉架書庫サーバーを弄り始めた。


 帝都中区桜通の国立文書館、その地下に建設された魔法機環まほうきかんサーバーの複合体が、古文書アーカイブと呼ばれるものの正体だった。その閉架書庫の奥底、まだ資料の整理が終わっていない領域に積み上がっていた呪符パターンに、該当があった。


 古文書アーカイブに閉架書庫が存在する理由は簡単だった。発掘品の書籍は、傷みや破損が多い。虫食い穴だらけだったり、退色していたり、触ったら砕けそうなほどに劣化していたり。データ化して整理しようにも、簿冊が解けてページの順番すら不明になったものさえある。発掘品をとにかく散逸しないように保存収蔵するだけで手一杯の有様だった。

 さらに言えば、発掘されたばかりで解析の終わっていない呪符の中には、危険なものが混じっている可能性は常にあった。


 焦げ茶色に変色した紙片の束の中に、その呪符の記述があったことを思い出した。先週、データ整理をして、魔法機環への登録を済ませたはず…… 正式登録待ちの順番待ちリストにまだ残っているはず。

 ソニス法符師ほうふしは、自身が整理した発掘資料が、閉架書庫の奥底に眠っていることを思い出した。それをパレイベル艦橋から呼び出して、確認した。

 細部に食い違いはあったが、間違いなかった。


「そっか、そうだよ……うん、うん……虚数魔法符きょすうまほうふ冷熱修飾符れいねつしゅうしょくふが付いているから……」

 また、メモ用紙に不思議な走り書きが躍った。疑似コーディングと呼ばれる手法だった。しかし、疑似コーディングは書式が規格化されていないために個人差が大きく、同じ技巧官ぎこうかん同士でも通じない。ラファル技巧官ぎこうかんにとって、ソニス法符師ほうふしのメモは文字ではなく絵だった。


 ラファル技巧官ぎこうかんは、技能的に相手が上である以上は、何を言っても無駄と知っていた。だから、ソニス法符師ほうふしが、他人も理解できる言い回しに、自身で通訳するまで待っていた。

「三時の位置に共振系の〈デクレッシェンド符〉があります。符形ふけいの平衡安定を考慮すると、まだ資料が足りないのです」

 ソニス法符師ほうふしは、符形解析を始めると言い回しが跳躍する。その跳躍した言葉を他の天空騎士たちに解るように整理すること。それが、自身の役目と、ラファル技巧官ぎこうかんは理解していた。

「三時の反対、九時の位置にバランスを取るために、まだ、何か未知の〈周転円〉らしいものがあると……? その画像を集めれば良いのですね?」

 ソニス法符師ほうふしがうなずいた。

 ラファル技巧官ぎこうかんは、パレイベル艦橋に響くように声をあげて伝えた。 

教導騎士団きょうどうきしだんの飛竜使いに連絡を願います。機械獣魔きかいじゅうまの九時方向……つまり、左側から呪符を観測されたい」

 さらに、その言葉が飛竜使いの天空騎士たち向けに意訳され、燭光信号となって早朝の空に打たれた。


 〈周転円〉とは、妖魔が遺した呪符プログラムを解析し、その呪符で記述された魔法陣を理解するうえで、重要な要素だった。

 高度かつ複雑な魔法陣は、天空を廻る星々を模していた。天球模式図アストロラーベに近い配置をしていた。中心に〈太陽〉、その周囲を同心円状に〈周転円〉が公転する。〈周転円〉と呼ばれる円環魔法陣の上に〈惑星〉を模した魔法陣が自転する構造をしている。


 フェリム期に属する高度魔法は、この周転円を多数重ね合わせることで、魔法陣ひとつでは到底、達成不可能な高レベルの魔法を完成させていた。

 妖魔の呪符プログラムは、天球模式図アストロラーベに極めて多数の周転円を有していた。六百年前に異世界から侵入を果たした時点で、漆黒妖魔は数多あまたの異世界で獲得した魔法陣を、すでに彼らの魔法の〈周転円〉として取り込んでいた。漆黒妖魔の魔法に、対抗することが困難である理由のひとつはそれだった。

 妖魔を屈服するために強力な魔法を行使し、攻撃をしても……妖魔はそれを学び取り、自らの魔法の〈周転円〉として取り込み再構成してしまう。


 呪符魔法プログラムを取り込んだ〈周転円〉は、法符師や技巧官たちからは、〈周転円環魔法陣プラスミド〉と呼ばれ、彼らを魅了し、あるいは恐れられていた。


 漆黒妖魔は、はるか昔から数多の次元世界を彷徨う流浪の民でもあった。理由はわからないが、漆黒妖魔は生まれ故郷を放たれて、いずれかの場所に向けて彷徨い続けていた。その過程で人との戦いを繰り返し、戦いの中で目のあたりにした魔法技術を取り込み、再構成した。その再構成された魔法である〈周転円環魔法陣プラスミド〉は、恐るべきことに、漆黒妖魔の間では交換が可能だった。


 〈周転円環魔法陣プラスミド〉交換という技術を持っていたことで、漆黒妖魔は、より強い存在へと進化したとされている。

 そして、妖魔が展開した魔法陣を解析することとは、すなわち、この魔法陣の構造、特に〈周転円環魔法陣プラスミド〉を特定し、その円周上に記述された呪符プログラムを読み解くことと同義だった。


 機械獣魔の左側から撮影された画像は、統合指揮所経由でまもなく届けられた。

 ソニス法符師ほうふしは、機械獣魔の周囲を飛び回る飛竜使いからもたらされた映像と、古文書アーカイブに登録された呪符パターンとを、突き合わせる作業に没頭した。

 そして……


「ちょっと、これ、半端ないわ……」

 判明した呪符プログラムの能力や危険性をメモ用紙の中で計算してから、ソニス法符師ほうふしは手櫛で髪を掻きあげた。それが、気持ちを切り替える時の癖だった。


 パレイベル艦橋の主蛍砂表示管しゅけいさひょうじかんへ解析を完了した魔法陣を表示した。

「対象となる魔法陣のうち、ひとつを解析できました。極めて強力な防御魔法です」

 ソニス法符師ほうふしが立ち上がって、まるで宣言するかのように声をあげた。

「第三と第九周転円に虚数項を有する月属性呪法を確認。古文書アーカイブ閉架書庫に該当あります。対象は、虚数月魔法〈デクレッシェンドの静謐せいひつ〉と同じく虚数月魔法〈ファレンカルクの雪代ゆきしろ〉を持っています」

 虚数月魔法に特有の複雑な魔法符形まほうふけいを目の当たりにして、艦橋に詰めた天空騎士と技巧官ぎこうかんたちの誰もが感嘆を漏らした。


 機械獣魔は、ほとんどの属性の攻撃魔法を無効化する呪符とともに、金属を侵食する冷雷魔法をその身にまとっていた。

「真銀特殊鋼の鎧を着ているから、こんな物騒な呪符を使えるのですが……」

 魔法に対する容量が大きい金属である、真銀を含む特殊鉄鋼をまとう機械獣魔ならではの呪符の使い方だった。解析の結果は、悲観的だった。

 ラファル技巧官たちが徹夜でかけた硬化魔法の効果は、虚数月魔法〈デクレッシェンドの静謐〉で無効にされていた。


「私たちの魔法機械騎士は、近づいただけでも壊されてしまいます」

 天空艦隊が保有する鋼鉄製の機械騎士や鋼鉄の剣は、虚数月魔法〈ファレンカルクの雪代〉が相手では、触れただけでもその鋼鉄製の騎士の体躯や刀身を魔法に侵食されてしまう。結果、鋼鉄の剣がまるでガラス細工の如く砕けてしまった。


 予想以上の困難な状況を前に、天空騎士たちも技巧官たちもうなった。

 しかし……

「方法はあるわよ」

 ソニス法符師ほうふしは、傍らに立つラファル技巧官ぎこうかんだけに聞こえるささやき声で笑った。金属を破壊する虚数魔法を、金属製の機械獣魔が盾として身にまとっている。危ういバランスを保っている間は、この機械獣魔は無敵に近い。

「ガストーリュですか」

 沙夜法印皇女さやほういんこうじょに従う魔法機械騎士は、真銀特殊鋼で作られていた。冷雷浸食魔法に対する耐性は、この機械獣魔と同じだった。

「それも、あるけど……」

 ソニス法符師ほうふしは、苦笑いのような柔らかい笑みを浮かべて、ふたりの間だけで通じる表情で合図を送った。

「まさか……!」

 ラファル技巧官ぎこうかんは、その微笑みの意味するところに気付いて絶句した。

「そう、あなたのお気に入りの可愛い法印皇女様ほういんこうじょさまの切り札、あの冷雷魔法なら、ね」

 虚数月魔法〈クレッシェンドの静謐〉を〈周転円環魔法陣プラスミド〉に持っているから、並み半端な攻撃魔法は無効化されて通じない。しかし、自身が使用する冷雷魔法だけは無効化されない。

 金属製の機械獣魔自身が冷雷魔法に侵食されない理由は、それが制御可能な分量だからだった。つまり、冷雷系統の攻撃魔法だけは機械獣魔に到達する。

「確かに、噂に聞くとおりの魔法力を沙夜様がお持ちならば……」

「いくらフェリム第4期の機械獣魔といっても、魔法機環が管理可能な魔法力に上限はあるでしょう?」

 ソニス法符師ほうふしは妖しげに笑った。それが帝都では禁則事項だと知っているからだった。

「飽和攻撃ですか、それは……そんな無分別をする方では、ありません」

 ラファル技巧官ぎこうかんは首を振った。

 真夏のあの日、発掘品に紛れ込んだ機械獣魔と戦った時も、沙夜法印皇女さやほういんこうじょは、機械工廠を壊さないように配慮して、攻撃魔法を限定的にしか行使していない。

 また、沙夜法印皇女さやほういんこうじょ教導騎士団きょうどうきしだんへ出した指示は、統合指揮所経由でこのパレイベルでも共有されていた。その指示は、ずいぶんと安全よりだった。


 他方、飽和攻撃とは、敵対する相手の対処能力を超える大量の魔法を浴びせて、物量で相手を打ち倒す攻撃手法だった。漆黒妖魔の機械獣魔が相手の場合、その高い防御力を越えるためには、帝都に甚大な被害を覚悟しなければならないほどの魔法力が必要だった。

「妖魔は、私たちを……ううん、沙夜法印皇女様さやほういんこうじょさまを試しているのかも知れないわね」

 

 ふたり分の嘆息。沈黙……


 そして、ソニス法符師ほうふしはさらに声を潜めて、ささやいた。

「もしもね……メートレイア伯爵家の古いお伽噺を、妖魔が本当に信じているとしたら……?」

 それは古文書アーカイブ閉架書庫に収められた文献に断片的な記述がある〈物語〉だった。

「あの子を失った理由も……」

 その言葉を、慌ててラファル技巧官は遮った。

「そ、それは、ダメです。お願いですから、絶対に沙夜様の前では、今の話は口にしないでください。事情はあなたもご存じでしょう」

 

 そのとき、燭光信号しょくこういんごう担当が声を張りあげた。

沙夜法印皇女様さやほういんこうじょさまよりリクエスト、来ました!」

 ラファル技巧官は待ち構えていたとばかりに、内緒話を打ち切って、駆けだした。

「ガストーリュを出します! 左舷七番、蒸気投射管へ誘導してください」

 そして、艦橋の中を横切り、蒸気投射管を担当する技巧官のもとに走った。

「精密投射を願います。それと、座標をください」

 ソニス法符師ほうふしは、背伸びをした。それから、幼い法印皇女ほういんこうじょのために一生懸命な、学生時代からの〈お友達〉の横顔に微笑んだ。




♯星歴682年 10月 17日 午前6時20分

  アゼリア市北区上空 天空揚陸艦パレイベル格納庫


「魔法機械騎士ガストーリュ、出ます。蒸気投射管へ誘導を願います」


 艦内放送が響いたとたん、誘導員の少年は黄色いパドルを抱えて走り出した。巨大な白亜色の魔法機械騎士は、片膝を立てた姿勢で身を低くして主の声を待っていた。艦橋からの指示が格納庫に届く直前、その魔法機械騎士がゆっくりと立ちあがった。

 

 重機械の稼働音が轟き、風が奔った。機械騎士が歩み出すと、鋼鉄製の床に重い振動が弾んだ。


 少年誘導員は、魔法機械騎士の偉容に圧倒されそうになりながらも、その歩む前に駆けだした。

「ガストーリュ様、左舷七番の蒸気投射管へ誘導しますっ!」

 少年は、数ヶ月前にペーファリユ領の森林地方から帝都に出て来たばかりだった。魔法機械にあこがれて、ウラシル魔法機械工廠を志望し、実習生として学ぶことになった。このパレイベルに乗り込んだのは、同じく魔法機械騎士が大好きな先輩技巧官に誘われてのことだった。

 早朝、この天空揚陸艦パレイベルへ飛竜で降り立った沙夜法印皇女さやほういんこうじょを出迎えたのも、この少年だった。僅かな時間を垣間見た法印皇女様ほういんこうじょさまは、少年よりも背が小さく可憐だった。


 この真銀特殊鋼で形作られた、白亜の魔法機械騎士は、沙夜法印皇女付さやほういんこうじょづきと知らされていた。特殊な魔法を帯びているため、誰も騎乗しないままに無人で動いていると教えられて、少年は瞳を輝かせた。

 朝顔の紋章を肩に彫られた魔法機械騎士は、精巧な機械だけに備わる気高さを携えていた。


 先に立って歩く。すぐ後ろを、正確に歩調を合わせて巨大な魔法機械騎士がついてくる。少年は胸を躍らせていた。



 

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