#007 発掘品の中、魔法機械騎士と少女は
♯星歴682年 7月 17日
アゼリア市港区
ガストーリュに出逢ったのは、この
びっくりな出逢いだったから、一目惚れみたいに、私はこの
それは夏休みの始まりだった。北部高原に位置するアゼリア市も、
だから、試しに
もちろん、そんな事情を何も知らされていなかった私は……いきなり、大変な重労働に駆り出されるハメになった。
ラファル
……問題なのは、ラファル
そんなある日、いつもどおりに
運び降ろされたのは、イル砂漠で発掘されたとかいう
私、頑張ったのに……
こんなにたくさんの機械の欠片が、おかわりで届くなんて。まさか、また、全部を
えっと、そろそろ何か変だって思ったでしょ?
このウルシル
結局、イル砂漠での発掘作業に携わった学士の先生方が先に仕分け作業をしてくれることになって、私は助かった。そうじゃなきゃ、私、
♯星歴682年 7月 24日
アゼリア市港区
学士の先生方の作業手順は……当然だけど、ラファル
そんな様子だから、ラファル
学士先生が付けた最初の鑑定は、
だけど……私がその
本当にびっくりした。
ちょうど休憩時間のことだった。
ご老人向けの微妙に柔らかい食感のお菓子が苦手で、私は逃げるついでに、その巨大な溶けた塊にちょっかいを出した。
私がちょっと触れただけなのに、突然に黒く熔けた塊が鳴動を始めた。
「えっ? なんで……」
すっとんきょうな声を思わずあげた。
怖くなって、飛び退って、走って逃げた。
だけど、溶けた
まさか、溶岩みたいな塊の中に
「ちょっと、やだ、来ないで……」
スカートを
この段階で充分に大事故だった。もちろん、
私は、なす術もなく汚れた
間近に迫った黒い
だけど、死んじゃうと思った瞬間、真っ白な
ぎゅっと、つぶっていた目を開けて見あげた。
次の瞬間、弾き飛ばされた黒い
息を呑んだ。
深々と、黒くて恐ろしげな死神の鎌が、
私を救った
絶対に抜け出せないはずだった。
それなのに……
再び、黒い金属光沢に濡れた鎌が振り下ろされた。
「やめて、ガストーリュ、もう、いいっ!」
そう、私は叫んでいた。
不思議とその名前が口を突いて出たの。どうして、そんな名前を私が知っていたのかは、後で分ったけれど、その時はとにかく、私を救ってくれた
一瞬、ガストーリュと私が呼んだ瞬間、
でも、真っ黒な
振り向いて、ガストーリュの
続いて防御魔法〈カトレの水晶壁〉を与えた。これは私が使える防御魔法の中では一番に硬い。この
これまでとは異質な
ちょっと、驚いた。
防御魔法を全力で使った。だけど、こんなに効果が出るとは思わなかった。だって、こんな巨大な
……どうして?
ひとつだけ、可能性が浮かんだ。
――この
次々と心に浮かぶ答えに、私自身が驚いた。
だって、魔法には、個人差が大きいの。
もちろん、
でもね、同じ魔法でも唱えた術者が違うと、細部は全然違う。引き出せる効果も違うし、見た目でも魔法発光の色は異なる場合が多い。
例えば、火炎系攻撃魔法なら、高位の使い手ほど魔法光の色温度は高くなるし、どんな鋼鉄の塊だって溶かしてしまう。逆に、初心者ならば、
驚くような推論に基づいて、次の魔法を選んだ。不思議と迷わなかった。
「ガストーリュ、私の魔法を使ってっ!」
差し出された
瞳を閉じて、イメージを心の中で紡ぐ。
名前のない私の中にだけある魔法。
名付けられていない魔法。
誰も知らない魔法だから、黒い
私を守り続ける
周囲を素早く見回した。
私と、ガストーリュで何とかするしかないと決意した。
私のとっておきの魔法は、既存の
「……ガストーリュ、お願いっ!」
長めの精神集中。定型文を持たない、言葉の欠片の集まりだけの魔法を、何とか編みあげた。
重機械の唸る音と
同時に再び、逞しい左手に包み込まれて守られた。ガストーリュの右拳が
――
太くて硬くて決して折れることのない鋼鉄の楔を心の中で形作った。
ガストーリュは、またも、完璧なタイミングと効率で私の、私だけの特別な魔法を使いこなした。
ガストーリュが守ってくれるって信じていたから、間近でこんな大攻撃力の風魔法を使ったのに、私自身を守る魔法は用意しなかった。全力で、風魔法で編んだ
結果は、一瞬だった。
溶岩みたいに
いくら天井が高くて巨大といっても、
「ありがとうございます。ガストーリュ……」
終わった思った途端、身体から力が抜けてしまった。お世辞にも
そうしたら……
ひび割れていた大きな指先が、私が触れた途端に
「えっ……どうして?」
触れただけで破損した
だけど……
ほんの一瞬だった。
遠雷のように何か魔法みたいな音が聞こえた気がしたの。
「えっ?」
驚いて周りを見回した。もちろん、壊れたふたつの
――それが、私にガストーリュの〈声〉が聞こえた最初だった。私が魔法のイメージをガストーリュへ心の音色で伝えたように、この
それが、この
私には、この
――もっとおしゃべりしたいって。
幸いなことに、ラファル
だから、どんな大変でも直そうと思った。毎日、
だって、この
それに……後になって「理由」を知ることになるのだけど、この
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