#006 魔法機械工廠、ガラクタを愛する技巧官と
♯星歴 682年10月11日 午後6時5分
アゼリア市
やっと
水上バスに乗り換える
いつも持ち歩いている懐中時計を確かめたら、もう、水上バスの時間、ぎりぎりだった。水路をまたぐ連絡橋を走った。もう、ちゃぷんちゃぷんと近づいてきた水上バスが立てる波が寄せ始めた港区行き桟橋へ。
水上バスが白い湯気を吐きながら船着き場に入って来るのと同時に、紫色に
そうね、南部の
私の家、メートレイア
それに、街に暮らすみんなと一緒の席に座って、時には通りすがりの人たちとも水上バスの中で楽しく談笑もしていた。三十分ほどの時間だけど、変に気を遣われたりしない、何気ない時間が好きだった。
その日も、そうだった。
外周運河に今年も北の方から水鳥たちが渡ってきたよ……そんな話をしていたと思う。もう、先ほどゴンドラで感じた違和感なんて忘れていた。
♯星歴682年10月11日
アゼリア市港区
港区の倉庫や工場の建ち並ぶ区域にある
実は……アゼリア
言い訳をすると、天空貴族は天空の海に住んでいるのであって、本物の塩っ辛い海に関する知識はかなり寂しい
港区は工場や倉庫、造船所といった機械と油の匂いがする雑然とした場所だった。
そして、市街の南外れに位置するこの
赤い
本当は天空軍に所属する
そこに、私にとって大切な
ガストーリュという名の
けれど、三ヶ月ほどかけて
「ガストーリュ、ただいまっ!」
詰め込み学習から抜け出した開放感でつい声が大きくなった。
太古の
もう一度、この
立ち並ぶ石英管は、
もちろん、機械的な
だから、私は、こうして毎日のように
太古の時代、
だから、
オレンジ色の
あっ……!
嬉しくて口元を押さえた。ほんの少しだけど、石英管の中に揺れる
待っていたように、後ろから声がした。
「
振り返ると、この
「昨夜にステップが進んだのならメールで知らせてくれても良かったのに……」
「これは、すみません。昨夜は徹夜作業だったので、つい……」
言いすぎたことに気付いて、ごめなさいと詫びた。でも、ラファル
「この
瞳をきらきらさせたラファル
「これ、数値、振り切っている?」
電磁ピンで描かれた文字の列にいくつも、上限値越えを表す記号が付いていた。
「復元作業が進捗したので、外部接続でデータを取ってみたのですが……さすがにプロテクト
統合指揮所だけでなく、帝国公文書館にある古文書アーカイブまで参照したけど、該当する
「失われたプロテクト魔法の一種かも知れません。早くも大発見ですよ」
電磁ピンで打ち出したドットの組み合わせで書かれた数字に小首をかしげた。
「良く気がつきましたね。この
そこまでしゃべって、ラファル
「そうは言っても、
このときラファル
常識的に考えるならば、
もっとも、この
少しずつお話ししようと思うけど、
その理由のひとつに挙げられるのが、卓越した
そして、
えっと、もうひとつ説明しないといけないよね。
逆に言うと、
それから、ひとくちに
例えば、地上の街にも
他に良く知られているのが、帝都中区桜通の国立公文書館の地下にある古文書アーカイブ。太古の時代から現在まで、二十万点を超える
それにね、
確か、ティンティウム市芸術学院の教務棟にも中規模な
えっと、話を戻すと……
つまり、魔法の呪文を記憶するだけじゃなくて、いくつも同時に機械的に唱え続けることもできる精巧な機械だった。
ガストーリュみたいに高度な
もちろん力だけじゃない。ガストーリュは言葉を話せないけど、私の言葉に従って、私の想いを形に変えてくれた。ガストーリュは、ただの機械じゃないの。体こそ
太古の昔にこの世界へ侵入した
ラファル
「直径百六十二エタリーブの
そう話すラファル
「こんな特殊機械を
茶化して言われて、ちょっとむっとした。
「ガストーリュは私付きの
正確には、この時点では
それにね、ガストーリュは私付きの
「あはは…… お詫びにこれをどうぞ。寒いからお腹空いてませんか」
ラファル
お礼を言って、お
単管パイプで組まれた足場を上った。
せっかくここへ来たんだから、ガストーリュの
実感が薄いけど、私が楽しい気持ちの時は、この子、
……ガストーリュ、早く良くなって、目を覚まして。
甘いお
そうね、ガストーリュの紹介がまだだったよね。大切な
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