#004 銀杏金枝寮、私の小さな決心に
#星歴 684年11月 4日
ティンティウム市
芸術学院前駅でトラムを降りた。門限を過ぎていたけど、守衛さんにお願いして通してもらった。
先生方や他の生徒に出くわすと、気まずいので、なるべく目立たない倉庫棟の近くを抜けて
学内も
腕の中に抱いた鈴猫のクッキーの紙袋を見つめた。しっぽにリボン付きの鈴を結んだイラストが印刷されている。いつ見ても美味しそう。もしも、太古の
それだけは、絶対に防ぎ切らなきゃいけないって思う。
だけど、怖い。
私、二年前に
だから、みんなに私の本当のことを話して、この大切な私の居場所を守るんだって、声にしたい。
もちろん、こんなこと、全部、怖がりな私のわがままだと、分かっているけど。
だけど、さあって思うと腰が引けてしまう。今まで
◇ ◇
焼きたてクッキーの大袋を抱いて、
「
「急に泣きながら出て行っちゃうんだもの、どうしたの」
「三人とも、夕食も、お風呂もまだでしょ、風邪ひくよ」
口々に心配したって言われる。嬉しいけど、恥かしい。だから、言わなきゃいけないって、自身を励ました。そのために、こんなにいっぱいクッキーを買ったんだから。
「あの、みんなに、言わなきゃいけないことがあるのっ!」
声をあげたら、視線が集まった。半歩後ろでユカが
深呼吸した。
「ずっと、隠していて、ごめんなさい。私、天空帝国の
誰からともなく拍手が沸いた。
「やっと、言えたね」
「もう、そんなことで悩んでいたの?」
「夕食、
私は、きっと、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔をしていたはず。何事もなく受け入れてくれるみんなが嬉しかった。
甘い匂いの中に立って、深く頭を下げた。
今日、みんなに心配させたことを詫びた。
それから、少し長くなるはずのお話に付き合って欲しいと願い出た。
私の小さな決心は、拍手で迎えられた。
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