欠
××月×○日
悪魔に悩まされる一日が始まる。
雑誌のインタービューが翌日に行われるので、研究室の片付けを終わらせてしまわなくてはならない。それは学生たちにとって地獄。
「若いのだから、働け」
教授の言葉は代々受け継がれている。その言葉が何代受け継がれているのはわからないが、学生を動かせる力を持っている。
教授がその力を持っているのが聊か不思議である。
片付けを終えると、誰もが疲れた顔していた。しかし、達成感があるらしくどこか満足した顔でもあった。
ゼミ生たちは、
「お疲れ様」
と言い合い、重い足取りで各々の家に帰っていく。
自分も疲れた身体に鞭を打ち、のろのろと歩いて行く。電車に乗ると、溜まりに溜まった疲れで寝てしまう。
何とか、家の最寄り駅につくと、また重い足取りで歩く。いつもより時間がかかり、家の近くまで帰ってくると、誰かの影が見えた。
あぁ、あの影は、あいつだ。
家の前には、あの笑顔があった。
××月○×日
大学の友人と話をしているうちに昔話をしていた。懐かしくもあり、憎くもある過去の自分。楽しげな過去を披露する友人たちの話とは次元の違う会話が、友人たちとは違う世界に生きているようでもどかしさがでてくる。
「そういえば、お前の幼馴染ってこの大学だったよな? 名前、なんだったけ?」
友人の一人が聞いてきた質問に疑問に感じた。だってあいつは人気者だから。
「××××だよ」
「××××って誰だ?」
誰って誰だ?
幼馴染は幼馴染で、××××は××××で……。
自分は××××のその笑顔が嫌いで、嫌いで、羨ましくって、羨ましくって? 何で?
羨ましい
何で?
何故
どうして
羨ましい
羨ましい
何で
何で
羨ましい
羨ましい
何で、だろう?
××月××日
「……なぁ」
こいつに話しかけるのはいつ以来だろう。いつも幼馴染から話しかけてくるから、自分から話しかけることはないから、自然と緊張する。
幼馴染は少し嬉しそうな顔をしてこちらを見る。
「何?」
声の調子からいつもと違う困惑がうかがえる。幼馴染もまた緊張をしているのだろう。拳を握り、決意を固める。
「お前は今日も、昨日も、一昨日も、明日もいるよな?」
また、幼馴染は笑っている。
それは不適にも見えて幼馴染らしくないものだった。
今日も、昨日も、一昨日も、そして明日も。 湖山由哉 @koyama
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