第九十九話 魔導の塔とサラマンダー戦決着

魔導の塔が静寂を包みこむ。

一度避けた、サラマンダーは笑顔を崩さないが、次の突きに備える。


全員が息を飲み、ラクスの突きを見守る。

ラクスはさらに集中し、一点を狙う準備をする。

全ての神経細胞を集中し、一撃に備える。


「いくわ!」

ラクスが叫ぶ。

そして、二度目の突きを放つ。

それは明らかに、前回の突きとは違う次元のものだった。


全ての覚悟を持ち、一点に集中する美しさ。

元来、ラクスから感じる美しさだ。

それを極限まで高めたといっていいだろう。


そうして、二度目のラクスの突きには、速さと正確さ、覚悟が詰まっていた。


「これは!!」

前回とは違うスピードの突きに、戸惑う、運動美少女サラマンダー。避けきれず、ラクスの剣戟が肩に突き刺さる。そして、後ろに吹き飛ぶ、サラマンダー。


「ううぅぅぅぅ」

肩を打たれ、抑えながらうずくまる、サラマンダー。

さっきとは違い僅かな差で、よけきれなかった。

ラクスの覚悟、集中が、さらに剣速を押し上げたのだ。


「うう、なんで・・・・・・」

疑問を口にするサラマンダー。

なぜ同じことが二回できないのか、自分で自分が信じられない。悔しさにまみれた顔をしていた。


「あなたは、確かに強いわ、驚くべき身体能力と、炎の力」

そう賞賛するラクス。

僕らが見ていてもかなりの強敵であることはわかった。

決して弱いわけではない。


「けど、あなたは軽いわ。そこに私との差がある。つまり、相打ちなら私が勝つのよ。」

「な・・・」

いままで、同じ思いをしてきたであろうラクスの言葉は重かった。ラクスは常に、自分より力の強い、男達と戦ってきたのだ、彼女のスピードを武器に。


「しかも私は真剣なのよ、相打ちにするのは、圧倒的に簡単だわ。なのに、自分の身体能力にたよって、二回も、突きを避けるという作戦にでた。」

「うぅ」

叱るように、説明するラクス。

先程から、ラクスは、後輩に説教するかのような態度だ。

そこにはそこはかとない愛情があるように思う。


「そんなに私の剣はあまくないわ!!」

「たしかに、舐めた結果がこれということか」

と、肩を抑えつつ立ち上がるサラマンダー。

残念そうに言う。

悔しさをもう隠せない。


「うーん、わかった!降参!!」

サラマンダーはキャットシーに向かってそういった。

悔しいが、十分やった結果勝てなかったことを認識した。

という感じだった。


「わかったニャン、勝者ラクスにゃん!!」

キャットシーが、そう言った瞬間、僕らは雄叫びをあげた。

サラマンダーの言葉を言葉を的に勝敗のジャッジをキャットシーが下した。これで公式の勝利となったのだ。


「うおおおぉぉぉぉ」

「やったゼェ」

「ラクスやりました!!」

三人が大きく喜んだ。

わずかな間にさらにラクスが成長した。

さらに先が楽しみになってきていた。


こうして、15階のボス戦はラクスの勝利をもって幕を下ろした。

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