第九十八話 魔導の塔とラクスの覚悟と突き

「行くわよ!!」

ラクスが突きを放った!!


ズバァァァン!!


ラクスの突きが静寂を切り破る。


一方、炎に包まれた運動美少女サラマンダーは、集中していた。

燃えるように赤い髪。

それを揺らし、体全体に炎が宿る。

大気と一体化しているような少女。


突きが放たれた瞬間、最小限の動きで、突きを見きった。

ラクスの一撃を感じとっていたのか、なんと、ギリギリで突きを避けた。


「すげェな」

ガルクが感嘆する。

「あの、ラクスの突きを避けるなんて、並じゃないぜェ」

「炎をアンテナの様にしているのかな、あれを消せばあるいは・・・・・・、ウォーターで援護できるかもしれない。」


「よけいなことしないで!!」

長髪の美少女剣士ラクスは、僕にそう言い放った。

珍しい光景だ。


「やめときなァ、ナオヤ」

ガルクが僕にそう言う。


「でも・・・・・・」

僕は言葉に詰まった。


「大丈夫、見てな。次は決めるぜ。」

ガルクがこともなげにそう言う。

「そうなのか?」

僕は問うことしか出来なかった。


「ラクスを舐めるなって、アイツはヤバイぜェ」

「それはわかっているんだけど、サラマンダーとの相性が悪いような。」

「相性の悪さくらいで、引くラクスじゃねえぜ。アイツは信念があるからな。」

信念?と僕は聞いた。


「そうさァ、次に進む覚悟。目的があるからなァ」

「目的!?そういえば、そんなことを、口にしていたような」

これだけ一緒にいるけれども、彼女のバックボーンについて、きちんと聞いてなかった。自分の魔法に夢中だったのだ。その事を恥じつつ、ガルクに聞く。


「ラクスの両親は魔王に殺されている。その仇を取るのが、彼女の使命だ。」

「そんな・・・」

そんな大事なことを知らないなんて。自分の愚かさを恥じた。


「だから、負けられねェんだよ。こんなところで。ラクスはまだまだ強くならなきゃいけねェ。」

「そうだったのか。」

僕は驚いていた。


「あとは、オマエの成長を見て、思うところも有るんだろうよ。このままじゃいけないってな。」

「そうなのか」

僕はそれしか返せなかった。


「成長の著しいお前を見て、悔しかったのだろうよ。アイツはああ見えて負けず嫌いだからな。まだまだ、伸びるぜ」

「そうだったのか。」

僕は何も見ていなかったのだろう、本当に。


「お兄ちゃんたち!しっ!!」

ミコルちゃんが、僕達二人をたしなめた。


「始まる!!」

静かに観覧することを求めるミコルちゃん、それにしたがって、静かに見守る、ガルクと僕。


「なにが違うっていうの?結果は同じだよ!」

そう言って炎のオーラを纏う、運動美少女サラマンダー。

また、ぴょんぴょんと飛び跳ね、ストレッチをする。


「さ、かかってきな。」

くいっくいっ、とカモンと聞こえてきそうな、ジェスチャーをするサラマンダー。


「いくわ」

先程より集中した構えをする。ラクス。

炎を使って、空気を読むサラマンダーに、一撃を放てるのか。みんなが息をのみ、静寂が魔導の塔を包んだ。

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