第九十六話 魔導の塔と美少女サラマンダー

サラマンダーが放った拳は、真っ赤に燃える炎の拳だった。


その拳をギリギリで避けたラクス。

いつもより真剣な眼差しだ。

緊張感が伝わってくる。


「悪い悪い。いってなかった!わたしはサラマンダーだから、触ると燃えるよ!!」

「教えてくれてありがとう。真剣と同じってことね。ということは手加減は不要ね」

サラマンダーの挑発に、ラクスらしからぬ、煽るようなことをいって返した。


「ふふふ、言ってくれるじゃないか。」

楽しそうに呟くサラマンダー。

走りだし、回転蹴りを放つ。

ラクスはその蹴りを鞘でうける。


「こうすれば、炎は関係ないわね」

鞘でサラマンダーの蹴りをうけ。

そのまま、鞘を振り回し、サラマンダーを吹き飛ばす。

純粋な力勝負だと、ラクスに利があるようだ。


「いままで、ゴーレムとばかり戦ってきたのよ。あなたのような、軽い蹴りでは、私には届かないわ」

「言ってくれるなぁ!」

ラクスはどんどん煽る。でも、サラマンダーはほんと楽しそうだ。


ぶわっと炎がサラマンダーの周りに広がる。

飛び出す、サラマンダー。

受ける準備をするラクス。


「ふふふ、甘いな。」

足元から炎を吹き出し、途中で加速するサラマンダー。

鞘で受けるはずだったラクスが後ろに吹き飛ばされる。

物理法則を無視した、サラマンダーの攻撃。


「大丈夫か、ラクス!変わろうか?」

僕はラクスに問う。


「大丈夫大丈夫!邪魔しないで」

ピシャッと言われた。

これ以上女子の戦いに口を出すのは、良くないらしいと悟った。

物理を無視した戦いなら僕の方が向いてそうだから、言ったつもりだったけど、ラクスの闘争心に火をつけてしまった。


「ふふーん、どうだい。油断しただろう。」

「そうね、かなり油断したわね。」

「いい忘れてたけど、私、炎の精霊サラマンダーだから」

「炎を手足のように使うのね。おもしろいわ」

サラマンダーとラクスによる、女子同士の熱い戦いが繰り広げられる。お互いの手のうちがだんだん明かされてきている。まだ、出しきってないことを含むようににやりと笑うサラマンダー。


「こういうのもあるよ」

当たらない距離でパンチを繰り出すサラマンダー。

その瞬間。攻撃に気がついた。ラクスは反射的に避ける。


「あつっ!!」

とはいえ全部避けきれるわけもなく、火の粉がかかり、声が漏れる。


「やるわね。次はそうはいかないわ。」

それはどうかな。


と、リズムに合わせて、遠隔から拳を振るサラマンダー。

そのたびに、炎のがとんでくる。


「はっ!」

そのタイミングに合わせて、ラクスが抜刀する。

すると、剣圧で、炎が吹き飛ぶ。


サラマンダーが繰り出してきた炎を全て、吹き飛ばしていた。


「どうかしら?」

自慢気に言うラクス。かなり珍しい感じだ。

実力を出せる相手に楽しんでいるのだろう。


「やるじゃないか」

燃えるような美少女サラマンダーはにやりと笑った。

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