第四十一話 最大出力

「こりゃキツイ」

巨大な岩に向かって僕は言っていた。

大魔法使いが僕の上空に投げた巨大な岩だ。

落ちてくる岩に向かって、ウォーターを当て続ける。

なんとかバランスを保って、岩が落ちないようにする。


「頑張って!おにいちゃん!」

ミコルちゃんがそういう。

うう、頑張ってと言われても、これはかなりキツイ。


よく考えたら、僕はずっと理系で、体育会系じゃないので、こういうことをあんまりやってこなかった。

かなりキツイ。


プログラマーの中には、筋トレが好きな人もたくさんいるんだが

僕はあまりやったことがなかった。


そう、プログラマーの中には筋トレや楽器が得意な人も実は結構いる。プログラマーが苦手なのは体育ではなくて、体育会系だという話がある。

淡々と自分の能力が上がるようなものは、だいたいプログラマーは好きなのだ。もちろんゲームが得意な人が多いけど。


自転車や筋トレ、ギターやサックスなどの、一人で遊べる楽器屋トレーニングが好きな人は多い。

ただ、僕はあんまりやって来なかった。


だから、すごい大変だ。

「右にいったり、左に行ったり、これすごく難しい」

「おにいちゃん頑張って!ちゃんと岩を見るといいんだよ!」

えっへん!とミコルちゃんが教えてくれた。


岩を見る?確かにそうかもしれない。いままで、ウォーターを出すだけで精一杯だった。

よく見てコントロールするのは、よく考えて見れば、得意だ。

やっと落ち着いて考えることができた、重心を狙えばいいんだ。


重みの中心をしっかりと狙うことができれば少ない力で、持ち上げることができる。

逆にこれを外すと、変な方向に飛んでいってしまい、それをまた戻すために逆に力をいれて、などとやっているうちに無駄に魔法力を使ってしまう。


最近のCADつまり建築用のCGみたいなものであれば、結構自動で重心が求まる。これは設計をするときに必要になってくることだからだ。


そういうことができればいいなぁ、と現実逃避しつつ、岩の重心を探る。本来こういうことは得意だ。得意なのだが、それは冷静に制御していた場合だった。


今回はかなり重い岩が落ちてきているので、そうも行かない、制御しようと、力を弱めると、すぐに岩が落ちてきてしまう。

すごく良く出来たトレーニングなのだ。

小さい出力をコントロールすることは誰にでもできる。

大出力をコントロールする事に意味があるという訓練なのだろう、と理解した。


「おー、おにいちゃん上手上手」

「ははは、ありがとう」

そうはいっても結構限界だ。重いものを持ちながら笑顔になる

ボディービルダーの人たちの凄さがわかってきた。


そして、やっと慣れてきた頃。ミコルちゃんが動き出した。

「えい!?」

ミコルちゃんが殴ってきた。


「痛い!え、マジで?!」

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