第三十三話 落下

「ワープはやっぱりすごいわね。」

感想戦を見ていた、ラクスは噛みしめるように言った。

最初にこの魔法を覚えた時に、ラクスをお姫様抱っこして、ワープしたのを思い出した。あの時この魔法を思いつかなかったら

当時二人だったパーティは危なかったかもしれない。


その実感からか、ラクスがワープを評価してくれているのだろう。


「ホントだなァ、あの魔法のお陰で大魔法使い相手にあそこまで戦えてるからなァ」

ガルクも関心していた。確かに、ファイヤーはガルクの魔法の方が強力だし、ワープは変わった魔法の使い方なのだろうと思う。


「ホッホッホ、すごい魔法使いじゃワイ」

「ありがとうございます」

素直に、嬉しかった。


「感想戦にもどります。」

最初にファイヤーをうち、それを防がれたところ、次にファイヤー三連発と、放物線を描いたファイヤー、計4つを放った。

それを大魔法使いが防いでいる間に。

二回ワープをしていた。


「大魔法使いがガードしている間に二回ワープしました」

「ふむ、二回とナ」


「一回のワープでは回りことは難しいので、ファイヤーが煙幕になっているうちに、二回ワープしました」


「なるほどじゃわい」


「どういうこと?」

ラクスはガルクに聞いた。


「要はアレだなァ、まっすぐしか飛ぶことができないから、一回横に飛んで、背後にもう一回飛んだんだなァ」

「なるほど!そうすれば、直進移動しかできなくても、後ろに回り込めるわね」

「そうだァ、だけど、普通に横にワープしたら、見えて防げるから、ファイヤーを煙幕に使ったんだなァ」

「なるほど、あれは煙幕だったのね」

ラクスとガルクが僕の作戦を説明してくれていた。

ワープをよく見たことがある、二人だったから理解できたみたいだ。これが初見だと、見ぬくことは難しいだろう。


だから、実際のところ、こんなにうまくいくのは、この一回だけだと僕は思っている。相手がこの技を知らない、という事前情報を得ていたからできた作戦だと言える。


戦いは結構情報戦だ。なにげにITと相性がいい。相手が知らなくて、こちらが知っていることが多いほど、有利なように話を進めることが出来る。

これは魔法でも、プログラムでも変わらない。


「そして、僕は大魔法使いの後ろに回りこみました」

「そうじゃった、そうじゃった。気がついたら、後ろにいたのじゃ、びっくりしたわい!」


「大魔法使いを物理的に羽交い締めにして、空中にワープしました」

「凄かったわい、老体になんということをするんじゃ」


「そして、そこから、大魔法使いを突き落としました」

「ヒドイわい。あの状態でほんとに落ちたらどうするんじゃ」


「ぼくは、大魔法使いの能力を信じてたんですよ!」


「ほんとかしら?」

ラクスは笑った。

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