第三十四話 着地

そして僕は、ワープで50メートル上空まで、大魔法使いを無理やり連れて行き

そこで、大魔法使いを突き放して落とした。


「自分の着地の方法は良い方法を思いついていました」

僕はそう言った。


「あれは、最初の頃やっていた5センチ浮く方法を応用したのね」

朝の修行を見ていた、ラクスがそう言った。

そう、ワープを思いつく前にやっていた、修行が結果として

必殺技を完成させるために、必要なギミックとして残っていた。


「こういう魔法は、飛ぶのは簡単だけど、着地が難しいんだよね」

制御できない力はとても危険だ。


「飛ぶ前に、着地に使える方法をためしていたのが大きいね。」

「あの技を、着地に使おうと思うところが、やっぱりナオヤが賢いところよね」

ラクスが褒めてくれた。

ガルクと大魔法使いはポカンとしていた。


そして、空中で大魔法使いを落とし、自分も落下した。


「落下している最中に身体にオーラをまといました。」

僕は説明に戻った。


「ワープの時は、一瞬の移動にオーラを使うのですが、着地の場合は、自分の身体を数センチ浮かせることに集中します。そうすることで、50メートル上空から着地しても無傷ですみます。」


「一方、大魔法使いは、その初めての状況に巻き込まれたなか、高出力のウォーターで浮いてましたね。」


「フォッフォッフォ、そうじゃな。出来るかはわからんかったが、普段前方に魔法を出すときに、後ろに飛びそうになる力が働くのは分かっとったんで、下に打ち放ってみたんじゃ」


「すばらしい」


これはまさにF=MA(力=重さ✕加速度)でロケットを飛ばす理屈だ。

力を出したら、反力で反対方向に飛ぶ、というものだが

昔の人はなかなかこれに気が付かなかった。

地面と重力があるからだ。

ものを投げても、地面と摩擦がその反力を打ち消してしまい、人は後ろに飛ばない。


地面と重力が特殊な環境なのでF=MA(力=重さ✕加速度)というシンプルな法則になかなか気がつけなかったのだ


それになんとなく気がついて実践できるとは

やはり只者ではない。

魔法の力はかなり物理法則と結びついてる。

完全なるファンタジーではなく、現代科学とおなじで

電気を使って、不思議な事を解決しているのではなく

この、原題にはなかった、オーラによって

新しい科学現象を起こしているのだろう。


「さらっと、両手でウォーター出してましたけど、あれだけの高出力をまったくおなじ強さで出すなんてすごいです」


「おなじ強さじゃと??」


「はい、ああやって両手から水を出していた場合、まったくおなじ強さで水を出さないと、出力が弱い方に飛んでいってしまうんですよ、右手が弱ければ右手の方向に飛び、左手が弱ければ左手の方向に飛んでしまうんです」


「なるほど、そうじゃったんじゃな」

「なので、すごいんです」


「うむ、適当じゃ!」

ああ、やっぱり!

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