第二十五話 旅立ち

「ガルク、行くよ!」

「おゥよ!」

なんとか、ガルクを抱きかかえていた。

思っていた以上にガルクは重い、装備の部分もあるので

当然といえば当然なのだが、遥かに想像してた以上だ。


これ以上持ち続けると、手がプルプルする。

というかむしろすでにプルプルしている。もう持ち続けられない。

早く!早く!飛ばなければ!

そう思い、慌てて呪文を唱えた。


「ワープ」

オーラを身体にまとって、目標の50メートルを目指して飛んだ。

しかし、全くと言っていいほど目標には届かなかった。

50メートルどころか、25メートル。


なんと、わずかの25メートルしか

飛ぶことが出来なかった。

なるほど、こうなってしまうのか。


自分の魔法力がよくわかった。


「ありがとうガルク」

僕はガルクにお礼を告げ考え始めた。


これは重さというよりも、集中力の問題だな。

重い物を持つこと自体はそんなに重要な話じゃない。

ガルクが重すぎたので、

まったく魔法に集中することができなかった。


やはり、肉体的に付加がかかると、精神性にも影響がでる。

その影響により、魔法を普段通りに使えなくなることが

あるということだ。


「なるほど、おもしろい」

「おもしろいじゃねェ、ナオヤ、どういうことか説明しろョ!」

ガルクはしびれを切らして、僕に聞いてきた。

手伝ったんだから当然の主張と言える。

思考に集中していたことを伝えてから説明をする。


「悪い悪い!重さに意識を取られて、集中できなくなると、普通に出来ていたことができなくなるみたいだ。」

と説明した。

手伝ってくれた人に重い重い

というのは大変失礼な感じがするが。


「重いあつかいはひでェな、せっかく手伝ったのにョ!」

「まったくだ、ごめんごめん、おかげで助かったよ。これを本番でやらなくてすんだ!自分の魔法のコントロール力がよくわかったよ」


これで道中少しは安心だ。

自分の能力がわかっているということは、

かなり安心できることだ。

自分の能力を過信して

出来ないことをやろうとしてしまうことが、危険度が高い。

僕は、いくどとない経験からそのことをわかりはじめていた。


とはいえ、実践で覚えることも、たくさんあるので

それが悪いとも言えない。

ただ、自分の能力を正しく把握しておくのは

今後の役に立つ。


なので、素直にガルクにお礼をいった。

「ほんとはラクスにも手伝ってほしいけど」


「イヤよ!」

間髪入れずに、ラクスが断ってきた。

そして相変わらずガルクは豪快に笑っていた。


「????」

僕はよくわからなかったが。これ以上追求するのはやめた。


「さ、準備はできたわね!出発するわよ!」

「はい!」

「おゥ!」


新たな旅がはじまった。

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