青春ものといっても爽やかで甘酸っぱいものではなく、内面の葛藤と成長がメインに据えられた物語です。
丁寧でリアルな心情描写は、夏特有の大気の底にいるような空気感と相まって、読者の胸に迫るものがあります。
主人公たちはみな学生ですが、主人公と同じような悩みを潜在的に抱えた大人も多いのではないかと思います。むしろ、大人になって、大体の身の振り方をきめてしまったからこそ激しく共感する部分もあるのではないでしょうか。
ファンタジー要素もありますが、謎解きに直接的に関わるものではなく、主人公たちの内面をより効果的に写し出すものとして描かれているので、読み進めながらの謎解きも安心してできます。
登場人物に共感しすぎて心が痛くなることもあるかもしれませんが、その分クライマックスからラストにかけての主人公の決意や成長が劇的でスカッとします。
みなさま是非ご一読ください。
渦巻く心情の吐露が鮮烈な、青春もの×怪異的ファンタジー×ミステリ。
夏の暑く湿った空気が伝わってくる綿密な筆致と、噎せ返るほど濃厚に綴られる主人公の葛藤が印象的です。
何度も塗り重ねた油彩画のようなずっしりした文体のため、一気読みより少しずつじっくり読むのがお奨めでしょうか。
今なら季節感を味わいながら読むことができますよ!
自分は青春ものと捉えて読んだのですが、伏線が緻密に張り巡らされ、謎解きもしっかりされているので、ミステリとしての完成度も高いと思います。
(ただ、どこからどこまでが謎なのか? が少々曖昧な印象はありました。一個人の私見です)
学校内外で起こった事件に対して、友人に言われるがままに行動しているように見える(それにも理由があるのですが)主人公が、終盤宿敵ともいえる存在に対峙するシーンには胸が熱くなります。
そして、少し心が軽くなるラストに、素直に読了して良かったと思えました。
また、ツイッターにアップされている作者さん本人による作品イラストも素敵です。ぜひ、併せて一見を。