第7話 人任せは君だろ?

「じゃあ、最初の話の続き。イメージを変えたいんだよね?私も、篠田さんの好みなんてわかんないし、どうしよっか?こういう風になりたいっていうのが洋介君の中であったりすれば考えるし、こっち目線で考えて良いならそうするけど」


 イメチェンするにしても色々あるだけに洋介の意見なくしては変えられない。理想があるなら言ってくれた方が助かる。


 「僕としてはやっぱり今の印象を変えたいな。この地味な印象をさ、少しでもカッコ良く。ほら、僕、入学式に吐いてるし。その時と髪型もメガネも何もかも変わってないしさ…印象変えたいんだ……」


 最初こそ行きこんでいたものの、入学式を思い出して急にテンションを下げながら語りだす。


 出会いの切っ掛けとはいえ、やっぱり後悔はしてたんだね。あと、向かいの人。口元隠してるけど笑ってるの丸見えだから。


 「落ち込みたい気持ちはわかるけど今はそのことは忘れて。どういう風になりたいかだけを教えて。抽象的でもいいから」



 渋い顔をして考え込む洋介。


少しぐらい考えてから相談に来なさいよ、と、心の中で悪態を付きつつも、最終下校の時刻も近いため、洋介に代わって私なりの意見を口にした。


 「私もファッションとかそういうの詳しくないけど、洋介君ならカッコ良さより清潔感のある感じが理想的かつ現実的なんじゃない。それならイメージが悪くなることもないだろうし」


 少しでもイメージの足しになればと思い私なりの意見を口にする。見た目的にカッコよさを求めるのは難しいため無難すぎる意見ではあるが。


「清潔感……」


 それを聞いた洋介が、呟いてぽけっと間を開ける 清潔感のある自分でも想像しているのだろうか。


 「清潔感…か。うん……それいいかも、自分で言っといていうのもなんだけど格好良いは無理があると思ってたし、それが無難だよね」

 「え…ホントにそれでいいの?」


 早すぎる決断に唖然とする。というか人任せか。


 「べ、別にそういうわけじゃないよ。ホントにそれが良いと思ったんだよ」


 狼狽しながら否定するさまは疑わしいことこの上ないが、また話が脱線するのであまり突っ込まないことにする。それに、まさか肯定するとは考えていなかったのでさっきから冷や汗が止まらないのだ。だって……


 「それって、どうやったらいいの?」

 「………えっ?」


 時が止まる。

 ともすれば数秒だっただろう時間も永遠と感じられてしまう程に。だが、それも長くは続かない。氷が溶けるようにゆっくりと、涼が口を開く。


 「人任せは君じゃないか…」

 「如月さん…」


 突っ込む涼と唖然とする洋介。当たり前の当たり前すぎる反応であった。


 「しょ、しょうがないでしょ!まさか良いっていうとは思ってなかったんだから。それに始めに言ったじゃない詳しくないって!」


 反論したのには理由がある。詳しくないというのも勿論あるが、他人の印象を良くするなんて生中なことではないと思うからだ。


 イメージを変えつつも、大事な所は変えないで相手の印象に残す。告白相手のことを常に頭におきながら印象を変えていく。


 実行に移す前からアレだが、そんなことが素人に簡単に出来る道理がない。実際プロのモデルだって服装や髪型などはその道のプロがやる仕事である。素人はもちろん、そういった方面に疎い私に上手くできる道理なんかあるわけない。


 「なにを言い切っとるんだ、自分から言ったんじゃないか」

 「そんなのはわかってる!でも……」


 イメージは出来ても実際に書いて絵にすることができないよう、ファッションに興味のない私がいくらやったところで上手くいくとは到底思えない。


 せめて、こういうことが得意な第三者に相談出来れば進展も望めるのだが…


 「その、如月さん。頼んでおいて言うのもなんだけど、あまり学校と関わりのある人に言うのは…ちょっと……噂が立つと嫌だし…」

 「わかってるって…わかってるから悩んでるんじゃない……」


 そもそも学校の誰かに頼んだら本末転倒の上ルール違反になるし、学校に頼める相手などいない。いたら今頃、対人関係で突っ込まれたりなんかしてココにはいないだろう。少なくとも、自分周りじゃどう考えてもダメだ。


 「う~ん…」


 どうしたもんかと考える。


そこで涼が口を挟んできた。


 「学校以外の人に頼んだらどうだ?」

 「え、なに?お店の人ってこと?」

 「それもあるが、学校とは関係ない人なら誰でも良いということだ。彼の事を知らず、彼女の事も知らない。それならばバレることもなく噂も広がらない」

 「…なるほどね、確かにそれならいいんだろうけどさ…」


 学校とは無関係の人物なら噂の心配をすることがない。確かにその人なら頼んでも問題なさそうだ。なるほど、これならいけるだろう。


 「なんだ、どうした?」


 ただし、普通の人ならだが。


 「私に頼める友達なんていないんだけど……」

 「「………………」」


 完全に呆れかえる二人。


 しまった…口に出して言うべきじゃなかった……ダメだ、このままじゃダメだ考えろ!一人ぐらいいるはずだ!!友達じゃなくても、学校と関わりのない人なら誰でもいい。親戚とか身内とか誰でも……


 「…身内……あっ、そうだ………!」


 学校とは無縁で彼らを知らない人物。噂を広めず関わりの薄い第三者。

 涼からヒントを貰い視野が広がった私は一人の存在を思い浮かべていた。相談内容、第三者としての条件、共に打って付けの人物を。

 

こちらの様子を伺っていたのか、洋介から安堵の表情がこぼれる


 「良かったあ…それでどんな人なの? その人って」

 「私が唯一相談できて唯一信頼をおく人物よ。だから安心して任せておいて」

 「友人のいない君にか? 信じられん」

 「どうとでも言って。じゃあ、今日さっそく相談してみるから、明日また言うね」

 「うん、よろしく。あっ…じゃあさ…」


 洋介がカバンを膝上に置いてゴソゴソ漁る。しばらくして、中から携帯を取り出した。


 「連絡先…交換してもいいかな…?」

 「あっ…ああ、そうだね。確かにそっちの方が効率いいかも」


 番号を交換しようなんて言われるのは久しぶりで多少照れながら答える。


見た目とは裏腹に以外と積極的である。普通、女の子に携帯の番号を聞くなど簡単にできるだろうか。同棲でも躊躇われるのに。


 「女子と思ってないんじゃないか?」

 「………うっさいわ」


 顔が赤くなるのを感じながら番号を交換する。そしてなぜか、涼のも一緒に。必要ないとも思えるが万が一もあるし交換して損することもないだろう。

 携帯の番号を交換し終えると、今日の話はここまでというように最終下校のチャイムが鳴り響く。


 私達の話し合いはここで一旦お開きとなり、部室を後にした。


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