<2>


「もぉーっ! どこ触ってるんですかっ!」


 どう見てもおっぱいです。本当にありがとうございました。

 そうツッコミせざる得ないのは、制服越しでもデカさが分かる美少女です。

 彼女の名前は――沢木明日香さわき あすか

 あたしと同じ一年生で、アダ名は「サワキー」。

 サワキーは、清楚系アイドルを思わせる完成された容姿を持つ美少女です。

 あとクラスのみんなにはナイショですが、とある組織に所属するおっぱいが大きい魔法少女です。

 身長178cmでJカップという、コスチュームの胸元がヤバイ魔法少女です。

 シャイで内気な性格ですが、放課後は異世界に召喚されています。

 はい、サワキーは異世界召喚系の魔法少女なのです。

 色んな異世界のSOSで呼び出されて、気合と根性で世界の危機を救っています。

 多忙を極めるサワキーは、先日もマスコットの淫獣に「お休み下さいー! 倒れちゃいますよぉ!」と泣いてました。

 衣装がピンクで仕事がブラックなアルバイトに励む、サワキーには仲の良い親友がいます。

 それは、サワキーの爆乳を揉みまくる銀髪碧眼のハーフ美少女です。


「ひぅ!? らめぇです!」

「くすくすっ。沢木さんのバストはまことに素晴らしい揉み心地ですの」

「オ、オリミーさんっ!? くすぐったいから、やめて下さいよぉ!」

「あら、揉んだから減るものであるまいし。沢木さんは、わたくしにお胸を揉まれて何か不都合があって?」


 百合な世界にキマシタワーなフラワーが咲き乱れて、あたしのハートがジャッジメントですの。

 キャッキャで、ウフフな百合カップルは、干渉せず鑑賞するに限ります。

 自分が二人の世界の異物であるのを自覚して、おさわり禁止・ノータッチを信条にした観察者に徹する紳士を目指すべきなのです。


「わ、わたしもオリミーさんに仕返しちゃいますっ!」

「くっ!? わたくしの指をチュパるとは、下賤げせんな沢木さんラメぇぇですのっ!?」


 サワキーに指をチュパカブラされる、銀髪碧眼のハーフ美少女。

 彼女はあたしと同じ一年生で、名前は「織原おりはらエミリー」。

 金属質な光沢の銀髪が見栄えする、日本人離れしたハーフ美少女です。

 彼女のアダ名は「オリミー」で、異世界の魔王です。

 地球のジャパンに誤召喚されて、平和な日本を拠点に世界征服を狙ってます。

 美麗なフリルを縫い付けた改造制服は魔王な感じですし、天気が晴れでも持ち歩いている日傘は魔王杖の変わり。

 はい、どこからどう見てもパーフェクトな魔王ですよね。

 まあ処女膜に魔力の全てが封印されてるので、本来の力を発揮するにはバージン捨てないとダメですけど。


「みんなぁ~☆ 紅茶を入れたけど飲むぅ~♪」


 間延びした声は、ニコニコ笑顔が眩しい先輩のロリボイス。

 ポットを片手に金髪の縦ロールを揺らす、彼女の名前は盛時和香もどき わかです。

 常に笑顔を絶やさない2年生の先輩で、アダ名はそのまま「モドキん」さん。

 モドキんさんは、クトゥルフです。

 太古の昔に宇宙から地球に飛来して、そのまま現地に溶け込んだ邪神の眷属です。

 いまは金髪縦ロールの美少女に擬態していますが、正体を表すとグロいです。

 たまに触手を出しますけど、あたしは何も見ていません。


「カスミンちゃ~ん☆ わたしのお手製アールグレイ飲む♪」

「頂くわ」

「お砂糖とぉ♪ レモンの輪切りとぉ☆ わたしの愛情は必要ぉかしらぁ♪」

「角砂糖とレモンの輪切り」

「もぉー☆ 愛情はプライスレスで入れとくわねぇ♪」


 ハイなテンションのモドキんさんに、クールな対応をするのは黒髪の乙女です。

 彼女の名前は、笠井菫かさい すみれ

 モドキんさんと同じ2年生で、あだ名は「カスミン」先輩です。

 容姿端麗な大和撫子で、寡黙で大人びた佇まいは深窓の令嬢。

 クールなカスミン先輩は、いつも無表情で、あまり笑顔を見せません。

 なので、見る人によっては冷たい印象を持つでしょう。

 だけど、カスミン先輩はイメージとは違うのです。

 いざという時は誰よりも頼れる、優しく部員想いな『幽霊』なのです。


 あと、部員はひとりです。

 ゆとり部のメンバーは女の子が多いのですが、1人だけ男子が所属しています。

 それは2年生の先輩で、ゆとり部を創設した部長。

 その名も「湯取卓ゆとり すぐる」。

 あたしは、ゆとり先輩に誘われてゆとり部に入部しました。


「ゆとりくんっ☆ はい、愛情だけのストレートぉ♪」


 差し出されたティーカップを、ゆとり先輩は黙したまま受け取ります。

 そこにお礼の言葉はなく、感謝の態度もありません。

 オレ様に茶を提供するのは当然だと言わんばかり、無礼で非礼で尊大な態度です。

 それが嫌味に思えないのが、ゆとり先輩のスゴイところだと思います。


 ゆとり先輩は、完璧な容姿の男子生徒です。

 ナルシストにティーカップを傾ける姿は、まるで神話のワンシーンを思わせます。

 さらに、体つきがエロいです。

 背が高くて引き締まった矮躯からは、匂い立つエロス。

 ギュッと抱きしめられたら、軽く3日はドキドキできそうです。

 もちろん、顔もエロいです。

 サダスティックな瞳で流し目されたら、あたしは溢れる愛液で溺れ死ぬでしょう。


 つまり、ゆとり先輩はイケメン過ぎるのです。

 イケメン過ぎるから居るだけでセクシー。

 イケメン過ぎるから喋らなくてもエロい。


 だから、


「ほぇー」


 瞳を奪われ、意識を奪われ、五感の全てを虜にされて。

 純情乙女のあたしは、ゆとり先輩に見惚れてしまうわけなのですよ。


 きゃー、めっさエロいです。

 体も表情もエロいですし、もちろん声もエロいです。

 ほらほら、

 たっぷり水気を含んだ、ゆとり先輩のエロ唇が「くぱぁー」と開いて。

 ミステリアスな、エロボイスで、


「セックスしたい! セックスしたい!」


 ……はい?

 ……いま、なんとおっしゃって?

 ……これは

 ……いわゆる



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る