<遅刻理由4> 由衣のパンツでみんながハッピー
あたしは、由衣を引きずって洗面所まで来ました。
ズルズルと、パジャマの裾を掴みながら、
はぁはぁと、息を切らしつつ、
ぜぇぜぇと、それはもう必死こいて……朝っぱらから、あたし偉いのです。
「ハァハァ……脱ぐのです」
「めんどいから、お姉ちゃん脱がして」
「……ぷちっ」
あたしは、床に転がるクズカスの脇腹を蹴ります。
「うぅぅ、暴力反対」
「却下なのです。あたしはまだ甘いですよ? 海外で仕事中のお父さんとお母さんが帰ってきたら、速攻でおうちを追い出されるのです」
「大丈夫だよ。あたしの見た目なら、拾ってくれる男はいくらでもいるから」
「なんちゅーサイテーな発想を……」
「若さとかわいさは女の子の武器だから積極的に利用しないと。脱がして」
「……自分で脱ぐのです」
「ちぇっ」
由衣は、ようやく立って服を脱ぎ始めました。
まあ脱ぐといっても、由衣はパジャマの上着とパンツしか身につけてない、典型的なニートスタイルなのですが。
いつも思いますが、脱いだ妹は中学生に見えません。
やせ細った体は日光を浴びてないから真っ白で、ちょー不健康な生活リズムのくせしてお肌はきめ細やか、お手入れ皆無なのに髪の毛はサラサラですし、顔はアイドルよりかわいくて、たかがBカップの貧乳ボディーのくせに内臓の存在が疑われるレベルで細い腰回りと、ツンっと上向きなヒップのボリュームで……えぇ、妹はケツがエロいんです。小さくてかわいらしいのにボリューム感のある上向きヒップという謎すぎるケツで、地味にDカップまであと少しなあたしよりスタイルがよく見えてしまう……同じ遺伝子を引き継いでるはずのあたしはイマイチ萌えない春日ミクで……世界が不平等すぎてムカつきます。
由衣が、パンツを脱いで言いました。
「あっ、パンツは洗わないでね。ジップロックして売るから」
「仕方ありませ……ちょっとタンマなのです。会話の流れから推測すると、由衣が五日も履き続けたパンツをジップロックに入れて売るよう聞こえましたが?」
「うん、高く売れるんだぁ」
「あんたっ、なにやってるんですかっ!」
由衣のパンツをブン捕って、あたしは叫びました。
「あたしは前々から由衣が通販でお菓子やジュースやゲームや漫画を買っている、お金の出所が不思議でならなかったのです! どうせお父さんあたりがこっそり仕送りしてると思ってましたが……まさかパンツを売ってたなんて、恥を知るのです、恥をっ!」
「恥を知るより、堕落を選びたい……」
「何かの格言っぽく言わないのです! とにかく金輪際パンツを売るのは禁止です! 怖い目にあっても知りませんよっ!」
「大丈夫だよ。オークションページに載せてる写真は顔にモザイク入りだし、荷物を引き取りに来るフンドシや黒猫の人は営業所に頼んで女性をお願いしてるもん。オマケにあたしは外に出ないし、オートロック付きのマンションで、安心、安全、快適、幸せ」
「でも……パンツを売るのはダメですっ!」
「ちぇ。売る方も買う方もどっちも幸せで被害者はいないし、オークションサイトは手数料で儲けれるし、運送業者さんも仕事が増えるし、みんなが得するのに……」
「使用済みパンツで、みんなが幸せ感じる世の中が間違ってるのです……たぶん」
由衣のパンツで、みんながハッピー。
明らかに間違っていますが、ぶっちゃけ反論できないのが悔しいです。
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