<遅刻理由3> 起きたら負けです。The You No May!!


「由衣、起きるのです」


 あたしは、由衣の装備を剥ぎ取ります。

 ドカッと、ローキックで。

 蹴りでふとんが吹っ飛んで、由衣が恨めしそうに声を漏らします。


「うぅぅ、外道畜生め……末代まで祟ってやるぅ」

「血縁者のあたしを末代まで祟ったら、由衣まで巻き沿いを喰らうのです」

「いまが良ければそれもあり……」

「ないのです」


 小さな体をブルっと震わせる、下着姿の由衣がファックなことを言いました。

 そんな由衣を、あたしは蹴りケリ。どんどん装備を剥いでゆきます。


 蹴り蹴り――ふかふか毛布は1500円、

 蹴り蹴り――そば殻の枕は貰い物でタダ、

 蹴り蹴り――敷き布団と掛け布団はセットで5000円、

 蹴り蹴り――由衣の安眠費用は計:6500円と安上がりです。


「お姉ちゃんは悪魔か……あたしは『起きたら負け』が座右の銘なのに」

「負けでもいいから起きるのです」

「負けでもいいから寝ていたい……負けても負けない不敗のあたし……むにゃむにゃ」

「目をつぶったまま床を這わないのです。布団を探してゴソゴソ蠢かないのです。落ち葉の下に隠れる虫みたいな動きは、ぶっちゃけキモいのです」

「あたしはNASAの依頼で、人間が寝たままだと体にどんな影響を及ぼすかの実験台に」

「なってないのです。モルダー、あなたは怠けてるだけ。諦めて起きるのです」

「あぁ、早く布団に帰って寝たい……」

「あたし、自宅で帰りたいって言う人、はじめて見ました。とっとと起きるのですっ、どクズッ」

「今日は寝過ぎて、とても疲れてるのぉ……」

「なら、起きるのですっ!」

「あっ!? 引きづらないでっ!? 布団に戻してぇ! あたしは怠けたいぃ!」


 着替え、シャワー、歯磨き、……これだけでいいのです。

 本日の目標は三つ。

 その気になれば、10分で終わる。

 余りのレベルの低さに、あたしはため息が止まりません。


「あぁ……引きづられるって楽かもぉ?」


 ほら。コイツ救いようがありません。

 何もしないし、プライドゼロだし、歩くの拒否るし、引きづられるのに味を占めるし。


 床に散らばるスナック菓子の空き袋が、がさがさゴソゴソうるさかったり。

 妹のお部屋は、ゴミ溜めみたいな汚部屋です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る