[7]狭く閉ざされたこの世界

 話が一段落した後に「そういえば――」と、最初に口を開いたのはエルミリディナだった。


「シセイとしてはどこまで覚えているのかしら? なぜ地下深くで氷漬けになっていたのか、心当たりはあるの?」


 至誠は改めて思い出せる限りの記憶を脳裏で整理するが、「いえ――」と首を振る。


「全く心当たりがありません。記憶もはっきりしないというか……昔のことは思い出せるんですが、高校生から――16歳ごろからの記憶がいくつか抜け落ちているような感覚があります。思い出せる限りで一番新しい記憶は17歳ですが、正直、ここで目覚める前のことはまったく……」

「なるほどねぇ。『なぜそこにシセイがいたのか』については、私たちも気になってるところだけれど、本人の記憶からのアプローチは難しそうねぇ」


 人差し指でくちびるに触れながら、エルミリディナは一呼吸置き別のアプローチを提案する。


「シセイが発見された時の映像を見せたら何か思い出すかしら?」


 そのままエルミリディナは再び顔を近づけせまる。


「見たい?」

「えっ――」

「かなりひどい状態だったわ。映像として見せることもできるけど、自分の凄惨せいさんな映像を見ると精神的によくないでしょうね。まずは口頭こうとうでどんな感じだったか説明しましょうか?」

「えっと、はい。まずはそれでお願いします」


 突然グロテスクな映像を見せられるのは勘弁かんべんしてもらいたいという心情しんじょうが顔に出ていたのか、エルミリディナはそう配慮はいりょしてくれる。


「まず、四肢しし切断せつだんされていたわね。ぐっちゃぐちゃだったわ」

「……えっ」

「内蔵も見えるくらい腹部ふくぶ損傷そんしょうが激しくてね。私たちが報告を受けた際、肉体の蘇生そせい成功率は1%未満だって見込まれていたほどよ」

「そ、そんなにひどい状態、だったんですか?」

「映像で見せなくて正解だったみたいねぇ」


 もしそんなものをいきなり見せられていれば吐き気に襲われて大変なことになっていたかもしれない――と、それが回避できたことを喜びつつ、想像しただけで至誠の血の気が引いていく。


 その間に、リネーシャが言葉を引き継ぐ。


「幸い脳や脊髄せきずい損傷そんしょうは見られなかった。そうでなければ蘇生は厳しかっただろうな」


 人の、ましてや自分の脳髄のうずいなど見せられた日には嘔吐おうとしかねない――と嫌な想像をしながらも、何とか今はリネーシャの言葉に耳をかたむけ続ける。


「記憶が無いのであれば推測すいそく憶測おくそくで構わない。なぜ氷の中で眠っていたかについて思い当たるふしや可能性はないか?」

「僕の身に何が起こったか……は、正直、見当がつきません。……ただ、僕の知る限り、人をこおらせるという状況には一つ心当たりがあります」

「ぜひ聞かせてくれ」


 メシロ茶を一口のみ呼吸を整え、至誠は言葉を続ける。


「日本では承認しょうにんされていませんでしたが……人体を冷凍保存していた国はありました。主に、不治の病の末期患者まっきかんじゃが『未来なら医療技術が進んでいて治療ちりょうできるかもしれない』といういちのぞみにける方法で……僕の知る限り、当時は解凍かいとうする技術はなく、それすらも未来に丸投まるなげするようなやり方でした……」


 至誠の説明に「ありえるかもねぇ」とエルミリディナが語る。


「『シセイに何かしらの不幸があって治療できないほどの重傷を負った結果、第三者が未来にたくして肉体を凍らせた』って可能性はありえるんじゃないかしら? シセイの意識がない間の出来事なら当然覚えてないでしょうし、強い衝撃を受けたから記憶が一部けつそんしていると考えるのはそこまで不自然じゃないわ。脳の記憶ってね、新しい記憶ほど欠落けつらくしやすいですもの」


 その説を聞いて、至誠自身も「確かに……」とその可能性が一番高そうな気がした。


 その一方で「この件に関しては――」と口を挟む。


「現在並行して至誠の発見された地層の調査を進めている。今のところ他にめぼしい発見はないが、もしかすると状況を推測するモノが見つかるかもしれない。そちらの調査に区切りをつけた後で改めて検討することにしよう」


「わ、分かりました」


 と同意し、至誠が再びメシロ茶に口をつけると飲み干してしまった。


 すぐに執事のスワヴェルディが新しいものを煎れてくれる。その間に、エルミリディナが「というか――」と口を開く。


「リネーシャはどうしても『暗黒時代の住人説』をベースに考えがちだけど、私はどちらかと言えば『異なる世界から転移してきた説』の方を推したいわねぇ」

「それは――僕としても日本が太古に亡びたとするより、そっちの方が嬉しいですね」

「でしょう? それに異なる世界との交流が広がったりしたら素敵じゃない? この世界は狭く閉ざされてるしねぇ」

「狭く、閉ざされて……?」


 至誠が首をかしげると、エルミリディナはリッチェに対し、額縁がくぶちに入っている世界地図を持ってくるように告げる。


 リッチェが壁に掛けられている額の中から1つの地図を取り出すと、そのほうまんな胸元が揺れないよう腕で押さえながら、エルミリディナに駆け寄ってきて「どうぞ」と差し出す。


 それは彼女たちが部屋にやってくるまでの待ち時間に見た地図らしき絵画で、実際に地図で間違いなかったようだ。


「これは『神託の地』の全域ぜんいきを表した地図で、人類の生存圏せいぞんけんはこの地図の中だけよ。これより外側にも陸地や海は広がっているけれど、そこは『不浄ふじよう』と呼ばれていて、生物がまともに生存できる環境じゃないわ」

「えっと、その『不浄の地』というのは『砂漠さばく』という認識であっていますか?」


 至誠が灼熱しゃくねつの世界を想像していると、エルミリディナは「似てると言えば似ているわね」とやや肯定こうていしつつも、実際のところは全く別だと教えてくれる。


「人や動物はおろか植物すら育たない『死の大地』という意味では同じだけれどね。でも砂漠と違って『不浄の地』がそうなっている原因はね、高濃度の『オド』が充満じゅうまんしているからよ。土地はオドに汚染おせんされ植物が育たず、生き物は免疫めんえきを超えるオドにさらされて死に至るわ」


「オド――」


 先ほど聞いた、大気中に存在する有害物質。それに汚染された土地という。

 そのままでは具体的なイメージはできなかったが、至誠は放射能汚染ほうしゃのうおせんされた土地を連想する。


 ――とはいえ実際のところ『オド』が『放射能』という可能性は低いだろう。体の免疫で放射能を分解しエネルギーを生成するというのはイメージしづらいし、何より放射能なら僕の体には無害というのはおかしい。


 その間にリネーシャが言葉を引き継ぐ。


「これまで『不浄の地』に関する調査は数多く行われてきた。だが今のところ大きな成果せいかはない。そこにあるのは延々えんえんと続く汚染おせんされた死の土地、可視化し視界を遮るほど高濃度こうのうど充満じゅうまんするオド、そして怨人えんじんだけだ」


「――エンジン……というのは何ですか?」


 車などに使われる部品ではないことは文脈ぶんみゃくから想像できる。ならば人の前段階である猿人えんじんだろうか?


 と至誠が考えている間にリネーシャが答えを口にする。


「分かりやすく一言で表すならば『化け物』だ」


 だがそれだけではよく分からなかった。猿人ならば人にとって代わり猿が惑星わくせいを支配した某映画のようなイメージだろうか――と考えてみるが、文脈から考えて確信が持てなかった。


 そもそも「化け物」という言い回しがこうすぎる気がしたので、自分の認識に問題がないどうか、まずは確認することにした。


「えっと、『化け物』の定義についてですが、僕のいた世界のイメージでは吸血鬼も『化け物』に含まれていたと思います。これは人間よりも圧倒的に強い力を持つ存在のイメージが先行していたからなんですが――そういう認識の『化け物』で大丈夫ですか?」


「いや、認識にズレがあるな。吸血鬼は『そういう種族』というだけの話だ。――だが怨人は違う。怨人とは『怨嗟えんさの人』という意味で、名称に『人』とあるが、人から派生した種ではない。分類としては『人擬ひともどき』であり、そもそも『生物ではない』と考えられている」


 怨嗟えんさの人。人に似た生き物ですらない化け物。それが怨人だと、リネーシャはさらに詳しく教えてくれる。


「怨人は原始的げんしてきたけびやうめき声を発していても言語を有しておらず、意思疎通いしそつうがはかれた前例は、基本的にはない。実験の結果、知性はないが感情があり、ありとあらゆる生物に対し強い怨嗟を抱いていることが分かっている。故に『怨嗟の人擬き』、『怨人』と呼ばれている」


 リネーシャは肩をすくめながら「まぁ、私が生まれた三千年前にはすでにそう呼ばれていて、誰が言い出したかは知らないが」と語りながら言葉を続ける。


「だが少なくとも怨人は、人に限らず動植物に至るまで全ての生物をおそしゅうせいを持っている。同じ怨人と、目に見えない微小生物びしょうせいぶつを除いてな」

「それが脅威きょういとして上がるということは……非常に強いか、あるいは数が多い、ということですか?」

「両方だ。人の数倍――中には数百倍もの体積たいせきを持つ個体が存在し、かつ、ちくできないほどすうの個体が不浄ふじょううごめいている」


 想像していたよりもはるかに大きな脅威きょういに、漠然ばくぜんとイメージするだけで言葉を失う。


「せめて外見がいけんが人の部位ぶいじゃなければ、少しはやりやすいんだけどねぇ」


 エルミリディナも、困ったものだわ――と言いたげに肩をすくめる。


「えっと……つまり怨人は『巨人きょじん』ですか?」


 巨人が世界にばっし人類が壁の中に引きこもっている漫画を連想れんそうしてみるが、エルミリディナは「違うわ」と首を振る。


「巨人は、亜人族に分類される『人よりも体躯たいくの大きな種族』だけれど、怨人はね、巨大な肉の塊に人の部位が乱雑にげつけられたような外見よ。例えば目や口が大量にあったり、腕や足が無数に生えていたりするわ」


 思っていた以上のグロテスクな外観に、再びなんと言葉を返せば良いのか分からなくなる。


「それでいて翼がないのに謎の原理で空を飛ぶ個体や、エラもひれもなく、泳いでいるとはとうてい言えない挙動で海中を遊泳ゆうえいする個体もいるの。不浄の地では高濃度のオドでこっちは行動に制限が付くのに、怨人にはそれがないのよねぇ」


「それが……うごめいてるんですよね?」


「そうよ。何百万、何千万……あるいは何億匹いるとも知れないわ。――ある程度の実力者なら巨大な怨人であろうと駆除くじょできるけれど、不浄の地で殺された怨人は他の個体を引き寄せる性質せいしつがあってねぇ……調査に出れば高確率で襲われるから、そうなったら身を守るために怨人を殺しかないでしょう? でも殺したらさらに多くの怨人が引き寄せられるのよ。身を守るために怨人をたくさん殺して、さらに多くの怨人が引き寄せられる――という連鎖れんさ状態が四六時中しろくじちゅう発生するわ。だから調査しようにもなかなかにままならないのよねぇ」


「かつてくそうとしたことがあったが、結果は失敗に終わっている」


「シセイの反応から見て、ニホンでは怨人やそれと類似るいじした脅威きょういは存在してなかったみたいねぇ」


「はい……猿人やEngine同音異義語ならありますが、意味は全く異なります。正直、言葉だけでは本当にいるのか懐疑的かいぎてきに思うくらいには――」


 この世界がいかに狭く閉ざされているかの解説が一段落したところで、エルミリディナは「とどのつまり――」と話を戻す。


「『神託の地』というせまい聖域しか生存圏せいぞんけんのない世界よりももっと広大で自由な世界があるなら私としてはそっちの方が心がおどるわねぇ。ニホンに行ける方法が見つかったぜひシセイにエスコートしてもらいたいわぁ」


 その場合、現代日本を含む世界が『不浄の地』の脅威きょういに巻き込まれる可能性があるが、今はその心配をしたところで仕方のないことだろう――と至誠は自分に言い聞かせる。そしてそんな杞憂きゆうにメンタルが削られる前に、話題を軌道修正きどうしゅうせいする。


「ひとつ疑問に思ったのは――いや、疑問は尽きないですが、今の話を聞いた上で気になったのは――そもそもの話、『オド』とは何なんですか?」


 例えば『酸素さんそ』は本来猛毒もうどくという話だ。だが人をふくめ、ほとんどの生物せいぶつが生きていく上では不可欠ふかけつだ。


 オドの立ち位置も似たようなモノだろうか――と考えて至誠は聞いてみる。


「よく使われる表現としては『有害物質ゆうがいぶっしつ』や『どく』という表現だ。だが実際のところは全くもって『未知みち物質ぶっしつ』で、そもそも物質かどうかも諸説あり結論は出ていない」


 要約すると「正直よく分からん」と、そんなところらしい。

 そんなものが世界中に充満じゅうまんしているのか――と、エルミリディナが他の世界に期待を抱く心情がより理解できた気がした。


「逆に聞いておきたい。至誠の知る限り、ニホンにおいて『オド』の影響はあったか?」


 その間にリネーシャが至誠へ問いかける。


「いえ……そもそも『オド』そのものがありませんでした。少なくとも、僕の知る限りでは、そう言った知識は持ち合わせていません」

「オドが……存在しないんですか?」


 思わず声を上げるリッチェは、すぐにハッとどうようの色を浮かべ「申し訳ありません」と割り込んだことを謝罪する。


「いや、リッチェの所感しょかんはもっともだ。それほど我々にとっては普遍的な存在だからな」


 エルミリディナが「そういえば――」と、リネーシャに向けて口を開く。


「『オド』って神話絡みに仮説があったわよね?」

「『神の楽園』神話における『侵犯者』が『楽園を崩壊ほうかいさせるために散布さんぷしたとする説』だな」

「そう、それ。確か怨人も、楽園を滅ぼすために使われた生物兵器だって仮説もあったわよね?」

「いずれも仮説の域を出ていないがな。――だがもし、シセイが『暗黒時代』に生きていたとすれば、両者が存在しないこととも整合性せいごうせいはとれることになる」


 オドや怨人の発生が楽園崩壊時であれば、楽園以前の時代には存在しなかったこととなる。


 まるでBC兵器のようだ――と思っていると、後ろの方でリッチェが恐縮しながら発言を求める。


「あの、発言してもよろしいでしょうか?」


 テサロがいさめようとしたように見えたが、その前にエルミリディナが「なにか気になることがあったかしらぁ?」と反応した。


「シセイ様がもし、オドや魔法、鬼道も存在せず、真理しんりに近い技術を持った世界からやってきたのだとしたら……その世界における『基盤きばんとなる技術』はどういったモノなのでしょうか?」

「それは私も気になるな」


 リッチェの発言にリネーシャが同調すると、視線は至誠に集中する。


「『基盤となる技術』ですか。……そう、ですね――」


 れいちょうるいから人間に進化し得たものとして、よく挙げられるのは『二足歩行』や『道具の作成』、『炎の利用』あるいは『言葉の発達はったつ』などだろう。


 だがおそらく、彼女たちの知りたいのはそこではない。


 産業革命さんぎょうかくめいを経て急速に技術が発展し始め、21世紀を支えるために必要不可欠の技術基盤が何かと考えると、一つの答えが浮かぶ。


「石油やガスも重要でしたが……たぶん最も重要なのは電気だと思います。電気によって社会が支えられていました」

「ほぅ、電気か」

「電気ってあれよね。雷と同じエネルギー体のことよね。あれってかなり不安定じゃなかったかしら?」


 リネーシャは興味深そうに、エルミリディナは不可解ふかかいそうにつぶやく。


「僕は電気工学に詳しくないので仕組みまでは分からないですが、大規模だいきぼな電気を安定させる技術が確立かくりつされていたはずです。各家庭から学校や会社にいたるまで全てに電気が行き渡っていて、電気なくして生活が成り立たないほど必要とされているインフラでした」


 天災てんさいで電気が止まると日常生活すらままならない――そんなニュース映像を思い出しながら語ると、明らかにリネーシャの表情がゆるむ。が、すぐに残念そうな表情にすり替わった。


「先ほどのスマホも、電気をエネルギー源として動きます。なので逆に電気がないとまったく使うことができません」

「実に興味深いな。電気工学に関しては可能な限り詳しく聞いておきたい――が、この話題を掘り下げていくとそれだけで夜が明けそうだな」

「そういえば、そろそろ日をまたぐ頃かしら?」


 エルミリディナがスワヴェルディに視線を向けると、すでに腕時計を確認しており、すぐに答えてくれる。


「現在23時半を回ったところでございます」

「先に切り上げる時間を決めておきましょうか。疲労ひろう無縁むえんの私たちなら何日没頭ぼっとうしていても問題ないでしょうけど、シセイは目覚めたばかりで『階段を上るのにも息を切らす程度に体力が落ちてる』って聞いてるわ。それに、ミグやテサロもそろそろ休ませないと過労で倒れるわよ? 『睡眠不足はいい仕事の天敵』よ?」

「そうだな。では0時――遅くとも1時までには一度切り上げよう。続きは本国に戻ってからの方が効率も良いだろうからな」


 エルミリディナが「それがいいわぁ」と同意している間に、リネーシャは周りに配慮はいりょを示す。


「だが、テサロとミグは先に休んで構わんぞ」


 その言葉にミグは「いやいやいや――」と、ややオーバー気味に手を振りツッコミを入れる。


「ここまで面白そうな話聞いといて途中で寝ろとか、生殺しすぎるっしょ。ウチらも陛下と同じ穴のむじななんっすから、1時くらいまでだったら余裕で付き合いますよ」

「ええ、同じく」


 ミグとテサロの意見に「なら好きにしろ」とこうていし、話を本筋に戻す。


「それで、シセイの知る『電気工学』についてだが、シセイはどれほど知っている? 材料を用意すれば試作できるくらいの知識はあるか?」

「いえ、すみません……学校で習った範囲なら知識として持っていますが、実際に作るほどの知識や経験はありません」

「そうか……それは残念だな……」

「学校で習うような基本的な理論や、既製品からのアイデア提供くらいであればできると思いますが、例えば『スマホを作る』ようなことは不可能です」

「では基礎理論を中心に確認することにしよう。――だがこの場で聞くよりも、本国に戻った後に適正のありそうな研究者を同席させた上で行いたい。問題はないか?」

「が、学生知識でどれくらいお役に立てるかは分かりませんが、可能な限り頑張って思い出します」


 自分よりはるかに頭がいいであろう研究職の人たちを大勢前にして高校で習う知識を披露ひろうするのは想像しただけで緊張きんちょうしそうになるが、今から心配しても仕方がないことだろう――と至誠は自分に言い聞かせる。


「他にも気になることは多々あるが……0時までに終わらせるとなると何を聞くべきか悩ましいな……。――逆にシセイの方から質問があれば聞くが、どうだ?」

「それは、こちらの世界に関すること――でも構いませんか?」

「今後のシセイの日常生活に関わることは帰国後に使用人をつけて面倒めんどうを見させよう。それ以外で何かあればねする必要はない」

「では――」


 とりよを巡らせた後、シセイはこの世界の世界地図を指差しながら問いかける。

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