好奇心は吸血鬼をも殺す
はちゃち
序幕 地上最強の吸血鬼
[0]リネーシャ・シベリシスの追憶
空腹というわけではない。
しかし脳裏にこびりついた
「
返り討ちにされ山のように積み上げられた
「……つまらん」
満たされないのは食欲ではない。
リネーシャは物心ついた頃から血で血を洗う
しかしどれほどの天才や
そうして地上最強の座を手にしたリネーシャが得たものは、
「
「――くッ、遅かったか……」
肩で息をしていた男はすぐに呼吸を整えると、面と向かい、帯刀している刀に手を添えながらリネーシャへ問いかける。
「念のため聞くが……
「お前だけだ」
男は深く
「……それで? お前は、そろそろ私を
リネーシャが過去にその男を見逃してやったことは数え切れない。そして
「俺という
だがリネーシャにとっては
「ようやく
男は「だろうな」とため
「話は変わるが――リネーシャ、ちょっと
男が
それは男も気がついているはずだ。だが男は構わず言葉を続けた。
「最近『
「
「けど、
間髪入れず
「お前は知らんだろうが『
「この前見てきたよ。これまで『
世界の外側には『
「だからと言って『他に何もない』ことの
「そんなことをして何になる」
「『何があるのか』『意味があるのか』は重要じゃない。その過程が楽しいんだ」
リネーシャは「興味ない」とあしらったつもりだったが、男は
「実際、苦労が実を結ぶことは少ない。でも、だからこそ、上手くいった時の達成感は
男が語る『仲間』とやらにリネーシャを引き込もうとしている意図は明快だ。世界最強の戦力を
「くだらん」
「そう、
そういう意味でくだらないと言ったわけではないが、実際のところリネーシャは男の
「……」
理解はできないが、少しばかりの
「俺にとっては幸いと言うべきか――この世界は
それに――と男はさらに続ける。
「
リネーシャはため息を一つこぼす。
表情で
「……まぁいい。今はその
そして肩をすくめるとリネーシャは
――。
――――。
――――――。
時代は
人の
たかだか100年
あの男もそうだ。
だがすでに
「今からでも遅くはない。
男の
だが彼は、今回も
「いいんだ、リネーシャ。人として生まれたからには、これが
リネーシャが目を伏せると、男は息苦しさを押し殺し、優しく微笑みながら言葉を続ける。
「それに、今とても好奇心がうずいて仕方がないんだ。この世界には明らかに
「……」
「リネーシャ。お前は強い。……だが、
それが男と交わした
そして彼はわずか100
彼は
だが彼の知的好奇心に付き合っている間に罠だったことはなかった。
そして共に歩んだこの数十年は、不思議と退屈とは感じなかった。
「……」
国を挙げて執り行われる勇者の国葬を遠巻きに見つめながら、リネーシャはがらんどうとなった彼の研究所で
「
気がつけば地上最強の吸血鬼は闘争に
代わりに未知なる
その後、リネーシャは男の研究機関を引き継ぐと知的好奇心の
そればかりか自らが皇帝の座に着き地位を手に入れると、金、権力、人脈の全てを
それから――
勇者が
時はラザネラ
「ねぇリネーシャ、デートしましょ! でぇ、えぇ、とっ!」
「この論文を読むことより
「あらあら、そんなこと言っていいのかしらぁ? 興味深い報告が上がってきてるわよ?」
現在リネーシャが皇帝として座するレスティア皇国、その第一皇女であるエルミリディナは勝ち
その報告書には『不浄の地に面したとある王国の鉱山地帯、その地中深くで新たに特異性を有する
リネーシャは「地中深く――」と呟き、思わず口角が上がる。
「人型としては珍しい発見のされ方だな」
「でしょぉ? あわよくば超越者の尻尾をつかめるかもしれないわねぇ」
そんな短いやり取りでリネーシャは
「
「そういうと思って、もう手は打っておいたわぁ! 少数精鋭でいいわよね?」
その日、リネーシャは新たなる未知との
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