[3]吸血鬼の眷属
「危ないですよ」
「――っ!?」
いつの間にやらすぐ後ろに立っていたスワヴェルディが耳元で
「自由にしていただいて
至誠が振り返ると、
スーツあるいは
その
「す、すみません……」
己の行動を
「食前のスープをご用意しております。どうぞこちらへ」
そんな
――この声、目が覚めた時に近くにいた男性かな?
声の印象の通り、二十代半ばほどの
イケメン執事とか、
お礼を言って
しかし、あくまでデザインが異なっているだけであり、
「申し遅れました、私はスワヴェルディ・ネロフィと申します。スワヴェルディとお呼びいただけますと幸いでございます」
「スワヴェルディさん――ですね。僕は加々良至誠です。えっと。テサロさんが、こちらではあまり
スワヴェルディは「
「こちらは
色味や香りはポタージュに近い印象を受ける。特に具はない様子で、ポタージュほどのとろみはない。
マナーとかどうなっているのだろうか――と考えてしまうのは、スワヴェルディが白人に見えるからだ。
残念ながら至誠は日本以外の食事マナーには
もっとも、日本においてのマナーというよりは、実家における家庭内ルールとでも言うべきかもしれないが。
しかしマナーを気にしすぎて
「――っ!」
それはポタージュに近い味だが、もっと味に深みがあるような……あるいは濃厚さがあるものの、その中にさっぱりとした口あたりなのが不思議に思えた。
少なくとも思わず息をのみ、舌をまく
「とても
グルメレポーターのような
だが言葉がなくとも、その満足そうに緩んだ表情によって満足であることが無事に伝わったようだ。
「それはようございました。まもなくメインディッシュが届きます。それまでのひとときをスープと共にお楽しみ下さいませ」
そう返すスワヴェルディもまた、表情を
至誠がスープをひとしきり味わうと、スワヴェルディは視線を日本刀へ向け「ところで――」と、問いかけてきた。
「先ほどあちらの
「あの、すみません、勝手に――」
改めてそう謝罪すると「いえ、大丈夫ですよ」と柔らかい物腰で答え、聞きたいことは別にあるようで言葉を続ける。
「よろしければ、なぜ『あれ』に興味を持たれたのか、お聞きしてもよろしいでしょうか? 例えば『手にしたいという
至誠は、ハッと先ほどの光景が
確かにこんなところに日本刀があることに興味を抱いた。
しかしだからと言って、他人のものを勝手に扱うのは
本棚に収められいている本を取らなかったのも、勝手に触れることを
それでも日本刀に手を伸ばしたのは、触れたいという
思い返してみると、自分が自分でなくなったような、不思議な感覚だ。
「確かに――そういった感覚が、少なからずありました」
「現在もその衝動は続いていらっしゃいますか?」
「いえ……今はまったく」
何か事情を知っているらしい雰囲気を感じ取りながら、至誠は首を
「ならば問題ございません。むしろアーティファクトの管理体制が不十分だった点、深く謝罪しなくてはなりません」
頭を下げるスワヴェルディに「い、いえ、そんな――」と頭を上げるように
「あ、えっと。その、アーティファクトというのは何でしょうか? 『古代の出土品』という意味で合っていますか?」
「
説明してもらったもののいまいち意味が分からず、至誠は首を傾げた。
「どうやらアーティファクトそのものを全くご存じないようですね」
どうやら心境が顔に出ていたらしい――と至誠は「はい……」と苦笑いを浮かべる。
「アーティファクトという単語自体は聞いたことがあります。ですが、その、未知の何とかというのは……どういうものかいまいち想像がつかないです」
「なるほど、では具体的にあのアーティファクトを例に説明致しましょう」
そう告げつつ、スワヴェルディは日本刀の方へと腕を向ける。すると日本刀が床から離れ宙に浮かんだかと思えば、彼の方へ飛んでくる。まるで強力な磁力で吸い寄せられたかのようなそれは、既に彼の手中に収まっていた。
何が起こったのか分からず
「例えば、こちらの刀は『
「特異性……ですか?」
「ひとつは、先ほどシセイ様が影響を受けた
物騒な単語が聞こえてきたことで目をまたたきながら続きを聞く。
「
先ほど至誠が感じた不自然な心理状態がこれに当たると解説され、なんだか恐ろしく感じた。
「第2段階に移行すると、累積血刀を使ってみたいという
「えっ……では僕も――」
「いえ、ご安心下さい。第1段階では他人からの声かけ程度で簡単に影響を脱することができ、かつ後遺症は残りません」
「そう、なんですね」
わずかな
「こちらの精神汚染は、複数人に対し同時に発生しないことが確認されています。また、誰かに所有されている間は他者の精神へ影響が及ぶことはございません。今は私が所有しておきますので、ご安心下さい」
「はい。……あ、でも、そうなるとスワヴェルディさんが――」
いきなり斬りかかられるのは怖い――と顔に書いてあったらしく、スワヴェルディは丁寧に補足してくれる。
「私は精神汚染に対して強い
「他にも『血液を吸収し、その累積量で切れ味が変わる、自己修復する』といった特異性もございますが――それよりも一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。僕に分かることでしたら」
「先ほど累積血刀のことを『ニホン刀』と表現していましたが、どのような意味でしょうか」
「えっと……その特異性? ――に関しては聞いたことがありませんが、日本刀という刀の形状によく似ていると思います。日本というは僕の祖国の名称なんですが……ご存じありませんか?」
「私の知る限り、ニホンという
至誠は彼らの国名を知らない。
彼らは日本を知らない。
加えて先ほど見た地図らしき絵画は全く心当たりがない。
一度は投げ捨てた非現実的な可能性が
「至誠様の知るニホン刀は、先ほど私が話したような特異性は存在せず、完全に打ち物――刃物であると考えて
ここで語るのはなんだか違う気がしたので、
「累積血刀と同等の形状をしたアーティファクトはいくつか存在します。しかしこれらはいつどこで誰がどのように造り出した
スワヴェルディの言葉は途中でフェードアウトしていった。
と同時に彼の視線は至誠から外れ、扉の方へ向けられる。
何かあるのかと至誠もつられてそちらへ振り向くと同時にガチャリと扉が開かれ、リネーシャと、緑色の髪をした至誠と同年代くらいの女性が部屋に入ってきた。
いや、緑髪と表現するのはやや
そんな玉虫色の髪をした女性は、十代後半ほどの印象があり、身長が160㎝ほどで、豊満な胸元が服の上からでも分かる。
深いローブに身を包んでいるが、デザイン性はテサロとよく似ている。手にしている
だがテサロと違い、緊張しているようで、その動きは少しぎこちない。
二人の後を、
至誠の位置からは何が運ばれてきたのか詳しく見て取ることはできなかったが、すぐに
気になるのは、一緒に部屋に入ってきた台車を誰も押していない点だ。遠隔操作や自動運転かとも考えたが、モーター音を始め、機械らしき音はまるで聞こえない。
「ご苦労様です」
スワヴェルディが事務的な口調で女性に告げると、その女性は緊張した面持ちを
「他にやるべきことがありましたら何なりと」
スワヴェルディは「では――」と次の指示を与える。
「細かい調整はこちらで行いますので、リッチェは
「はいっ」
リッチェと呼ばれた玉虫色の髪をした女性は、少し
「さて――」
意識がそちらに向いている間に、気がつけばリネーシャが至誠の右隣の席に座っていた。
「体の調子はどうだ? 食事をとっても問題なさそうか?」
「あ、はい。今のところ問題はないと思います」
至誠が問いに答えると、リネーシャは満足そうに口角を上げ、視線をリッチェの方へ向ける。
「では先に紹介を済ませておこう。彼女はリッチェ・リドレナ。シセイの
リッチェは紹介されると、一度その手を止めてお
「リッチェとお呼びいただければ幸いです」
「えっと、加々良至誠といいます。助けていただいて、ありがとうございます」
「いえ。自分のような
少し気恥ずかしそうに、あるいは申し訳なさそうに感じているようで、シセイの謝辞に少し目を泳がせた後に
「なに、はじめから完璧な者などいるはずもない。役に立てなかったと感じているだろうが、周囲の足を引っ張らなかっただけでも十分だ。これからの働きに期待している」
「――っ、恐れ入ります」
リネーシャの評価を受けリッチェの仕草は
そんな折に質問するのは最適か分からなかったが、自己紹介の会話の中で聞いておいた方が良いだろうと考え、至誠は「そういえば」と問いかける。
「リドレナと言うことは、テサロさんとは――」
「師匠であり、母になります」
そう答える彼女の口調に変化は感じられなかったが、至誠は――あっ、これは他人が
「それでは私はお食事の準備を進めさせていただきます」
紹介が一段落したところで再び
「そういえば、テサロさんは皆さんを呼んでくると言っていましたけど……戻ってきませんね」
行き違いを心配する至誠に、リネーシャが
「いや、もう一人を呼びに行っている。戻ってきたら紹介しよう。――それよりも、スワヴェルディの紹介は必要か?」
「先ほど挨拶させていただきました」
至誠が答えると、リネーシャは「スワヴェルディは
彼や彼女らの言動を見ていると、明確に
リッチェよりもスワヴェルディの方が上で、リネーシャはさらにその上の立場のようだ。
人間関係に上下があるのは不思議ではない。たとえ子供であっても、権力者や
そんな
姿を見せたのはテサロだった。部屋に入るとすぐに脇に避け、次に入ってくる人物に頭を下げる。
「ん――っ! やっと今回の
そう伸びをしながら
前髪がぱっつんの短髪で、純白のドレスで着飾っている。だが純白なのは服装だけではない。その髪の毛から指先まで全てが真っ白だ。肌は血液の赤さが影響して完全な白とはいかないものの、髪の毛は純白のドレスに引けを取らない白髪をしている。
それがアルビノと呼ばれる
至誠は実際に見るのは初めてだが、本当にそれがアルビノなのかは自信がなかった。
アルビノの
「結局私の出番ほとんどなかったわね。
「疲労とは
アルビノらしき少女の
「だとしても気は
肩をすくめ、少女はリネーシャへの不満を口にする。その
その間にアルビノの少女は歩み寄ってくると、至誠をなめまわすように見下ろす。
彼女の身長はリネーシャよりも一回り大きいがリッチェよりも小さい。
「あら、思ってたより
少女はひとしきり至誠の容姿を見つめ、にっこりと
どう返すのがいいのか悩んでいると、少女の方から名乗り、そして
「エルミリディナ・レスティアよ。
「――えっと、初めまして。加々良至誠です」
違う文化圏で育っていれば、あるいは違った
もしかしたら握手をすることが
――どうするのが正解だったんだろう? こう、手の甲にキスする感じに? ……いや、それはない。というかできない。日本人にそれは
そんな
「カガラシセイ……。ん~、どう呼べばいいのかしら?」
「テサロさんからこちらでは家名では呼ばないと聞いたので『至誠』で大丈夫です」
先ほどと同じように答えると、エルミリディナは「そう」と笑顔を浮かべる。
「じゃあシセイ、よろしくね。私のこともエルミリディナで構わないわぁ」
「えっと。はい。よろしくお願いします。――エルミリディナさん」
一見するとエルミリディナは年下のように思えるが、立場や身分も分からず、かつ女性をいきなり呼び捨てにするようなことはできなかった。
「ところで、『カガラ』が家名でいいのよね?」
「はい。『加々良』が
「家名の方が先に来るのねぇ。レスティア皇国ではそういう順番の名前は珍しいわね」
至誠にとってそのあたりは
それよりも別の疑問が頭をよぎる。
「レスティア皇国……そういえば、エルミリディナさんの
「ええそうよ。こう見えても私はレスティア皇国第一皇女で、レスティア皇国は私が所有する国になるわね」
エルミリディナは
その真偽は至誠には分からない。
もし仮に全ての話が真実だとして、皇族といった身分の人物が直接出てくるのが最も
――小さな
「えっと……皆さんには助けていただいたみたいで、ありがとうございます」
エルミリディナの立場が一番上なのだとすれば、一度は直接伝えておいた方が無難で、不足するよりは少し
エルミリディナは至誠の左隣の席に座りながら「お
「顔も
「ダメだ」
人のことをもらうもらわないなどと
「えぇー、いけずぅ。――まぁいいわ。帰ったら満足するまでリネーシャに相手してもらうんですもの。一ヶ月もの禁欲生活は
「さて?」
何のことやら――そんな顔を浮かべるリネーシャに、エルミリディナは口をとがらせる。
そんな二人に挟まれてどのような言動をするべきか分からない至誠が困った表情を浮かべていると、スワヴェルディが助け船を出してくれる。
「
スワヴェルディの
話にはついて行けなかったが、そのやりとりを見ていると、皇族を名乗るエルミリディナに軽い口調で返すリネーシャもまた少なくともそれだけの立場だと
「……ん? 殿下というのは、第一皇女のエルミリディナさんのこと……であってますか――? なら、陛下というのは……」
至誠が疑問をそのまま口にすると、なぜかエルミリディナが自慢げに答えてくれる。
「リネーシャのことよ。リネーシャには私の国を貸してあげているの。だから肩書きとしては
命を助けてもらったと思えば、その人物が
その間にリネーシャは別の誰かに声をかける。
「ミグの方はどうだ? 問題ないか?」
その言葉は至誠に向けられているが、至誠本人を見ているわけではない様子だ。視線を落とし、腹部の方へ向いている。
『特に報告すべきことはないっすね~。お
その声は至誠にも聞こえた。だが不思議と『音』として聞こえてこなかった。耳をふさいで声を出したときのような、直接脳裏に響くような不思議な聞こえ方だ。
「もし観測に変化があったら報告しろ」
『ちょっ! 待って下さいよ陛下ぁ! ウチもおなかすきましたって! 一緒に食べますって! げんにウチの分の食事も用意されてるじゃないですかっ!』
脳裏に響く声は若い女性のような印象を受ける。少しばかりお調子者のような雰囲気に感じたのは、リネーシャとのやりとりが原因かもしれない。
「別に食わなくとも問題はないだろう?」
『栄養的には問題ないですけど! でも
「なら念のため核はそのままだ。預かっていた
『りょーかいっ!』
会話が収束すると、リネーシャは右手を軽く握り、至誠とは反対方向へ腕を伸ばす。
直後、
至誠にはそれが『大量の血液』に思えた。
びっくりして椅子から立ち上がり半歩後ろに下がりかけたところで、エルミリディナに両肩を
「大丈夫よぉ。安心して?」
至誠の気づかないうちに彼女も立ち上がり、
リネーシャの
「んぁ――っ!」
直後に聞こえてきたのはそんな若い女性の声だ。それが先ほど頭に響いた声質と同一であることを、至誠はすぐに
声の主は
「いやぁ、今回はうちが一番がんばりましたよね――っ!」
人の形を成した血液からそんな声が聞こえてくる。
その声音は、先ほどまで至誠の頭に響いていた声質と同一人物だ。よく見ると、人の口に当たる部分が、人と同じように声に合わせて動いている。
「そうだな。ミグがいなければ
「でしょでしょ~? 帰ったらご
言葉を失う至誠とは対照的に、リネーシャはさも当然のように言葉を交わしている。
「例の予算の件なら
「いぃっやっほぅ!」
血液の塊は
それはまさに人と
そう考えている内に、彼女はリネーシャの背後をぺちゃぺちゃと通り過ぎ、至誠の目の前まで歩み寄ってきた。
「っと、ほったらかしで勝手に盛り上がってごめんね! いや~、それにこういう容姿だと初めての人はびっくりしちゃうよね」
彼女は
「ウチはミグ・レキャリシアル。
そういいつつ、左腕で
至誠が思考力を取り戻すよりも早く、エルミリディナが皮肉を挟む。
「言葉が出ないのは
「あっ、しまった! いや~、
「あらそうね。じゃあ例の予算の件、こっちで
「ちょちょちょ! 待って下さいよ皇女殿下様ぁ! 殿下ほど
部外者である至誠にまで伝わるほどの白々しいゴマすりを口にする。
「あら、分かってるならいいの。次に余計なこと言ったら流血鬼の
「変な研究を立ち上げようとしないでくださいっ!」
ミグがツッコミを入れている間、その
「――んじゃ、とりあえずこれでいいっすよね」
それは
「
エルミリディナが
そんな彼女を
「ってことで、改めてよろしくね!」
「は……はい」
至誠はどうするべきか結論は出なかったが、再び差し出したミグの手を取った。その判断に至ったのは勢いに押されたと
その感触は人の手というよりも水風船に近い印象だ。
手を離しても至誠の手に血は付いておらず、その不思議な感触に気を取られている間に、ミグは満足したように笑みをこぼしつつ、リネーシャの右隣の席に座った。
そんなやり取りの間に食事の準備が整っていたようで、エルミリディナの左隣にテサロが、さらにその隣にリッチェが腰を下ろす。
唯一、スワヴェルディだけはリネーシャの
「さて
いや、その静寂は彼女が口を開くのを周囲が待っていたことを物語っていた。
「まずは、ひと月半に
リネーシャの言葉は、至誠以外の全員に向けられていた。同時に、至誠とリネーシャ以外の面々は、手を太ももの上で組み、頭を下げる。
それはリネーシャに向けられたものだと至誠もすぐに理解できたが、彼女の座っている位置が至誠の右隣のために少し居心地が悪い。
同じようにした方が良いかとも考えたが、どのような文化なのか分かっていない以上、下手に
かといって何もしないのもどうなのだろうかと感じ、どうするのが最適なのか考えているうちに周囲の頭が上がり、リネーシャが言葉を続ける。
「ではここから先は
各々が料理に手を付け始めると、スワヴェルディはリネーシャのワイングラスに飲み物を
ミグに目をやると、鶏の丸焼きらしき食事に手を付けている。
手羽先に付けられた紙を持ち、足をちぎってから食べている。
そうやって取って食べるためなのか――と思いつつ他の人にも目を向けると、エルミリディナとテサロ、リッチェはナイフで鶏の丸焼きをきちんと切り取っていた。
雑に引きちぎるのはミグだけのようだ。それに食べるのも速く、至誠が周囲に目を配っている間に既に足先が半分くらいになっている。
「どうした? 食べられそうにないか?」
リネーシャがワイングラスから口を離しつつ、食事にまだ手を付けない至誠を案じる。
「あ、いえ。こういう種類のお肉は
「シセイの祖国はニホンと言ってたかしら? そこでは
上品に肉を切り分けるエルミリディナが日本という固有名詞を口にして問いかける。おそらく見えないところでテサロから聞き及んでいるのだろう。
「あ、これ、
「へぇ、面白いわね。普通、鶏肉と言ったら翼の枚数が多いほど高級なものなのに」
まぁとりあえず食べてみなさいな――とエルミリディナに
「――っ!」
「どうかしら? 口に合わなければ他のを用意させるから、
「いえ、とても
シンプルにして率直な感想を口にしつつ、反射的に笑みをこぼす。それほど
「それじゃあ冷めないうちに食べてしまいなさい。おかわりもたくさんあるわよ」
「ありがとうございます」
「あ、おかわりオネシャス!」
そんな会話の最中に、すでにミグは完食しておかわりを
ほどよい肉質と焼き加減は、ジューシーで舌の中でとろけそうな感覚すら覚える。味付けはシンプルに塩。
現状で気になることも分からないことは多く、比例して不安も大きい。
しかしこんな状況下でも、おいしい食事を
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