第249話

「あのとき、たしかに銃弾は発射された。けど、ギプスを貫通し、丹波くんの腕を貫通し、そこでとまった。その先のギプスまでは貫通できなかった。だからギプスのうち側から銃弾は摘出された」


 そのため天野くんの撃った銃の弾丸は丹波の身体にまでは達しなかったのだという。


「命に別状はありませんでした。銃弾が貫通した腕も奇跡的に神経が切断されてはいなかった。後遺症が残ることもないでしょう」


 その言葉をきいて、ほっと安心した。


「だけど……」


 先生はいう。


「丹波くんは、いなくなった」


 はっきりとした断言に、私の頭は真っ白になった。


 その言葉の意味はすぐに説明がされた。


「彼はアメリカの病院に転院することになった」


 医者の先生はそういう。


 それはこの病院や、事情を知っている矢野、そして矢野のおばあさんであり私たちの通う学校の理事長のはからいだったという。


 犯人が捕まっていない以上、丹波はこれからも命を狙われるだろうということは目に見えている。火を見るよりも明らかだ。


 隠れ家を焼かれ、新たな部屋も借りられない。


 おまけに通っている学校や居場所がすべてばれてしまっては、もうこそこそ隠れた今までのような生活はできない。

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