第232話

 警告音を背中にききながら、よろよろとエレベーターホールにむかい、到着しているエレベーターにのりこんだ。


 ボタンを押した。


 いく場所なんて一箇所しか選択できない。


 しかも、おりたところでそこには連中がいる。


 逃げ場なんてどこにもない。


 だが、このまま三階に残れば確実に焼け死ぬ。


 先ほど感じた無限の数秒間は、おりるときには一瞬だった。あっというまもなく一階につく。


 扉がひらく。


 同時に。


 人影が殺到してきた。


 黒スーツの連中だ。


「どけっ」


 そとを見るひまもない。


 私は先頭にいたがたいのいい男につかまった。


 そこにさらに数名が殺到してきた。全部が黒スーツの連中だ。


 エレベーターから引きずりだされ、押さえつけられ背中の丹波を引きはがされる。


 私はそこでようやく顔をあげた。


 エレベーターホールの先のガラス扉が割れている。夜風が吹きこみ、ケンカの音が鮮明にきこえてくる。

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