第231話

 とつぜん、窓が割れた。


「きゃっ」


 私はびっくりして悲鳴をあげてしまった。わずかに目もつぶってしまう。


 一瞬より、ちょっと長いまばたきだった。


 しかし。


 その目をあけたときには部屋の様相が一変していた。


 燃えていたのだ。


 まず割れた窓ガラスについていたカーテンに火が移った。


 カーテンは一気に炎上して部屋を焦がす。明かりの落ちた紺色の病室がにわかに明るくなる。


 やばい――


 そう思った。あわてて丹波のそばにいく。


 火災報知機が煙を感知した。けたたましい警告音を発し、頭上のスプリンクラーが水をあたりにまき散らす。


 私はベッドに腰かけて、眠っている丹波を背負った。


「うっ」


 重い。


 丹波の身体は細身なのにけっこうがっしりしている。おまけに意識がないから背負っても私に体重をあずけてくれない。重力のままにうしろに落ちていこうとする。


 そんな丹波をささえつつ、私は病室の扉を抜けた。


 部屋はすでに半分くらいが火の海だった。

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