第217話
私がふたたび病院に戻るころには、すっかり日が暮れていた。附属病院のまわりには、濃紺の闇が広がっている。
街灯のような明かりがない敷地内には白い建物をしたから照らすようにライトがあてられ光らされているくらい。
病院のどこかの棟が炎上しているわけでもなければ、私が先ほどあとにしたまま、とくに変わったようすは見られない。
広い敷地をぐるりとまわって、敷地内のはずれにあるVIP用個人病棟にむかった。
先ほどとおなじエレベーターにのり三階にいく。この病棟の三階への道はこれだけだ。ほかに方法はない。入口もここだけだ。
三階のエレベーターホールにつくと、ガラスの扉を抜けて十メートルほど廊下を歩く。その先にこのフロア唯一の病室がある。
私は先ほどあとにしたばかりの丹波の病室の扉をあけた。
安心した。
異常なほどおとなしく丹波は眠っている。
横には病院の先生らしい年配の白衣の男性と若い女性のナースがいた。私はとりあえず頭をさげた。
「きみは」
白衣の男性がたずねる。
私は軽い自己紹介をした。言葉が足りない部分の補足はナースの女性がしてくれた。
私が丹波の関係者であること。
そしてなぜか矢野と仲がいいなんていう、間違った情報まであたえていた。
私が先ほど一瞬、丹波が目をあけたことを報告すると先生はいう。
「そうですか。わかりました」
それから言葉を足した。
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