第214話

 先ほどのエレベーターホールにいくと帰ったはずの天野くんがいた。


「あれ、どうしたの?」


 私はたずねる。


「ああ」


 なんでもないといったようすで天野くんはこたえた。


「帰ろうと思ったんだけど、引き返してきたんだ。VIPルームなんてめったにこられないだろ。だから、どうせならちょっと探検してみようっていう話になって」


「理子と?」


 私はたずねる。


「そう」


 天野くんはいう。


 なるほどな。ふたりにとっては、これもデートの一環なのか。


「で、その理子は?」


 私はたずねる。


 天野くんはスマートフォンをいじりながらこたえた。


「トイレ」


 まったくあの女は、いつもトイレにいっている。


「そっか」


 私はいった。

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