第183話

「あの金髪。そんなにやばいやつなのかどうか知らないが、いきなり乱入したんだぜ。そして、おれたちの制裁のじゃまをした」


 金髪。


 制裁。


 どうやらあの日の丹波とのケンカのことをいっているようだ。


 丹波のいっていた、いじめだかリンチだかは彼らからすれば正当な自分ルールで、びしっと一本すじのとおったチームとしての制裁なのだろう。


 それをチーム外の人間にじゃまをされては気にくわない。


 私にはよくわからないが、ヤンキーの彼としてはそういった感覚になるようだった。


「先輩たちは、あいつにはふれるなっていっていたけどさ」


 きんきん声は血なまぐさいことをいう。


「あのガキ、生意気そうだし、おれらでやっちまわねー?」


 やっちまう。


 漢字にすれば「殺っちまう」ということだろう。


 その言葉に反応してしまう。


「そうすれば、おれたちだって名前が売れる」


 名前を売ってどうするのだろうか。


 ひとりの場所が好きな私は思う。まったくもって不良だかヤンキーだか暴走族だかの考えはよくわからない。


 私はバイクのまえをゆっくりととおりすぎた。


 視界のそとで、きんきん声の男がいう。

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