第182話

「ううん。いい。すぐそこだし、ひとりで帰れる。また月曜日、学校で」


 そういって眠った雑居ビルのまえでわかれた。


 丹波は繁華街の奥へ、私は入口にむかって歩いた。それぞれが逆に歩いていく。


 身体は冷たいが心はぽかぽか温かかった。


 私がひとりで歩いていると、アーケードの近くに何台かのバイクが停まっているのが見えた。ひと足先に店じまいをしているパチンコ屋さんのまんまえだ。


 そこにいつかのヤンキー集団がいた。


 エンジンをとめたバイクにまたがり話しをしている。


 まえに丹波に瞬殺(しゅんさつ)された連中だった。


「おれはよ……」


 きんきんと高い声がきこえた。


『先輩、こっちです――』


 あの日、そういっていた声とおなじものだった。


 きき覚えのある声に私はなんとなく耳をむけてしまう。歩きながら彼らの会話を盗みぎきした。


「あのガキのこと、ぜんぜん納得いかねーんだ」


 誰かをしめるとかぼこるとか、そういう方面の会話のようだ。私にとってはまるで興味のない話である。


 怖いし、さっさと立ち去ろう。


 そう思っていると、こんなせりふがきこえてきた。

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