第155話
次の日からも私は変わりばえのない生活を送った。
正確にいえば、変わったのか変わらなかったのかよくわからない前日までの延長としての毎日だ。
守るといってもべつに現在進行形で丹波が命を狙われているわけでもなければ、そんなようすも見られない。どう考えても切羽詰まった状況というわけではなさそうだった。
そんな状況なので私はとくに工夫するわけでもなかったし、そんなことをする必要もまったくなかった。
私にしても矢野たちからの露骨ないじめやいやがらせがひとまずなくなってはいたが、決して学校での待遇が改善されたわけではない。
クラスメートから無関心な態度をとられていることには変わりない。そしてアルバイトをクビになった事実がなくなったわけでもなかった。
もっとも、だからといって丹波に守ってもらう必要も今のところはなさそうだった。
あずかりもののアーミーナイフは活躍の場もチャンスもなく、おきものの魔法のランプの様相でただただしずかに眠っていた。そしてそのままポケットのなかのお守りという感じにそのニュアンスを変えていた。
まったくもって平和なものだ。
春という季節をしみじみ感じる。
翌週の学校では例によって矢野が色めき立っていた。丹波はまだ登校していない。
私の席はみごとなくらいにおとなしかった。
入学以来あれだけ悩んでいたいじめがこうも簡単に解決したのだ。
それには心底驚いている。
解決の糸口さえ見つからず、ずっと手詰まりだと思っていたのに、なんともまあ拍子抜けである。
目のまえにあるときにはとうぜんのように存在しているのに、ある瞬間をさかいにすっと目のまえからなくなったりする。どんなものでもそうなのだろうか。
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