第128話
私は状況だけはなんとか理解した。
今、丹波が私を廊下で抱きしめている。
なぜ?
私が階段から落ちそうになったのを、引きあげたその勢いだ。
なぜ?
私は誰かに口を押さえつけられ、あせって暴れた。その拍子に落ちそうになった。
誰が押さえた?
丹波は私の身体から離れた。
「いてえ……」
そういいながら手首のスナップをきかせて手を振っている。その手の甲には、くっきりと私の歯型がついていた。
なるほど。
私の口を押さえていたのは、おそらくこの男だ。いや、どちらかといえば間違いない。まわりにはほかの人は誰もいないし、そもそもこの学校内で私に近づいてくる人間などほかにはいない。
「なんで」
私は感情のままにいった。
丹波は私なんか知らないし興味もないし関係ないとはっきりいった。そのくせ、なんでこんなことをしてくるのだろうか。
「さっき教室で、あいつの机あさっていたろ」
なんでもないといったようすで丹波はいう。
ああ、そうか。
先ほど教室できいたもの音と私が感じた人の気配もこの男だったようだ。
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