第129話

 だが。


「はあ?」


 そう思った。


 だからどうした。


 私のせりふはほとんど反射だ。立ち去る矢野たち一行を横目で見ながら叫ぶ。


「あんたは、なんで私のじゃまばかりする……」


 それをさえぎるように丹波がいう。


「しっ」


 ひとさし指を一本立てて、それを私のくちびるに押しつける。粘膜の表の敏感な皮膚に、男の人のすじっぽい指の感触。むやみやたらに、どきっとする。


 私の目はたぶんまんまるに見ひらかれていると思う。それくらいにびっくりした。


「これ」


 丹波がおだやかな声でいう。


 指がゆっくりとくちびるから離れる。私は名残おしいわけではないが、それを追うように視線をしたに落とした。


 丹波は折りたたんだ指にケータイをはさんでいた。液晶の割れたスマートフォンだ。それが手のひらににぎられている。


「あっ」


 私は声をあげた。


 それは私が探していた、私のケータイ電話だったからだ。


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