第119話

 その日は一日、けっきょく自分の世界にはいりこんでいた。


 どうすれば、矢野たちにばれずに私のケータイ電話を探せるか。


 とうぜん、見つかったらなにをされるかわからない。


 だがもしこっそり探して見つけたとしても、それをとり返してもいいのだろうか。


 矢野の机から私のケータイ電話がなくなっていたら、矢野は犯人探しをするだろう。そしてとうぜん、まっ先にうたがわれるのは私だ。


 そうなればあとは容易に予想ができる。ものの一瞬で私がやったことがばれてしまう。その後の展開は火を見るよりも明らかである。


 ならばこの案は却下するしかない。そんなことになってしまったら、こっそりの意味がなくなってしまう。


 それならば、どうするべきか。


 考えた。


 ほかのすべを考えた。しかしどこからもこたえなんてでるわけがなかった。


 どこにもないケータイ電話とこたえと自由。


 それでも見つけなければならないという強迫観念から、私はびくびくと探すチャンスをうかがいながら一日をすごした。


 私にとってケータイ料金の支払いは、それほどまでに死活問題なのだ。怖くてもあきらめて泣き寝いるわけにはいかないことだってある。

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