第120話

 さいわいその日は矢野たち不良グループの関心は完全に私からそれていた。


 ことあるごとにうしろの席の丹波にくだらないちょっかいをだしている。


 振りむきざまに殴りかかったり、うしろにむかってひじ鉄をくらわそうとしたりする。


 もっとも、そんな矢野の行動を金髪の不良はまるで意に介していないようすだ。ひょうひょうとした態度で不良グループのかずかずの攻撃をかわしている。


 こんな調子ではまったくもってケンカにならない。


 昼休みになると矢野たちはいつものように連れだって屋上にむかっていった。


 私は勇気をだそうとしたが、不良グループ以外のみんなが教室にいるなかで、矢野の机をあさるわけにはいかなかった。


 無関心な二十数名だって、ただかかわらないようにしているだけで、私の行動自体には関心を持っているのだ。


 目立った行動をするわけにはいかない。


 けっきょくチャンスなんておとずれないまま、その日最後の授業が終了した。


 下校を告げるチャイムが鳴る。


 放課後がやってきた。

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