第116話
「そうですか。ありがとうございました」
頭をさげて、詰め所をあとにした。
これですべての手をつくした。なんともすくない。あっけない。しかし、もうこれ以上は思いつかない。
探すあてのなくなった私はしかたなく教室にむかった。
教室前方のドアをあけてなかにはいる。
誰もいない。
完全に私ひとりきり。
横を見ると昨日できた壁のクレーターのうえには時間割の予定表が目隠しのように貼られていた。
視線をあげた。
教室のかけ時計は、七時半すぎをしめしていた。おそらく登校してからまだ二十分とたっていない。
しかたがない。
自分の席に腰をおろして、机に顔をつっぷした。
どうしたものかな。
屋上にもなく、落としものとしても届いていない。完全に手詰まりだった。
帰りにケータイショップで紛失届と利用の一時停止の手続きをするにしても、果たしてでてくるのだろうか。
それならばいっそのこと解約したほうが早い気もする。
どうせ私に電話をかけてくる友達もいない。ケータイ電話なんて私が持っていたところでなんの意味も必要性もない。バイトも昨日でクビになった。
せっかく入学まえに奮発して新機種にかえたのにな。
バカ高い機種代の分割料金がまだ半分残っている。今、解約するとなったら、これを一括で支払わなければいけなくなるのだろうか。
そんなことになったら、いちだいじだ。まずはどうにかして体操服代の一万三千円を捻出しなければいけないのに、さらによけいな出費がかかることになる。
ましてや今はバイトだってしていない。
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