第117話
「はあ」
机につっぷしていても、ため息しかでてこない。
どうしたものか――
そればかりが頭のなかをぐるぐるまわる。アナログ時計の秒針が震える音をBGMに、頭をぐるぐる回転させる。
私のケータイ、見つからないのかな――
見つかれば、すこしでも状況がましになるのに。
きっと故障と紛失ではかかる費用もあつかいもぜんぜん変わってくるんだろうな。それならば、誰かが運よく拾って私に届けてくれないものだろうか。
あてのない甘っちょろい妄想ばかりをふくらませる。
あて……あて……
バカみたいに頭のなかでくり返した。
「あっ」
そこで気づいた。
あてなら、ある。
もしかしたら、矢野たちグループが持っているかもしれない。矢野たちは昨日の昼も屋上にたむろしていたのだ。
そのときにもし放置されたままになった私のケータイを見つけたのならば、それを拾っている可能性がある。だから屋上にもなく、警備員室にも届いていなかったのだ。
そうだ。そうに違いない。
私は思った。
そう考えればつじつまがあったからだ。
そしてもし矢野ではなく、矢野の仲間のうちの誰かが拾ったとしても、私の持ちものということを知っていれば、やはりまずボスである矢野のところに届けられるはずだ。
ということは。
私のケータイを矢野が持っている可能性はかなり高い。
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