第106話

 そもそも私は入学してこの学校のようすがわかったときから、その覚悟はできていたし、今までだってじっさいにそうしてきた。


 それなのに、なにをいまさらになって期待していたのだろうか。ちょっとかっこいいだけの転入生に甘い言葉をかけられただけで、浮かれてしまった私が悪い。


 なにやってたんだろ。


 バカらしい。


 情けない。


 けっきょくは誰ひとりとして、私になんて興味はないのだ。


 私は机のうえに頬杖をつく。灰色の薄暗い景色のなか、しとしと雨のふる窓のそとを眺め続けた。


 一定のリズムをきざみ、やむことなくふり続ける雨の音は、一度気にすると耳から離れずきこえ続けるが、慣れてしまえばまるで気にならなくなる。


 それならそれで、べつにいい。


 私は変わりばえのない日々に耐えて生きていけばいいだけだ。


 ひどく簡単なことだ。

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