第107話
学校が終わると、私は変わりばえのないもう半分の日常をすごすために校舎をでた。
私が昇降口で傘をひらいていると、理子と天野くんのカップルが声もかけずに私のことをうしろから追いこしていった。
ふたりは身体をよせあって一本の傘にはいっている。そしてそのまま相合傘で帰っていった。
「はあ」
私は、そのうしろ姿を見ながら駅までひとりで歩いた。
駅につくと電車とバスをのりついでアルバイト先のガソリンスタンドにむかった。
私が顔をだすと七三わけの店長が驚いたようすで近づいてきた。
「宮沢さん、大丈夫?」
すぐそばにこられると汗のにおいと加齢臭がぷんぷんする。店長は身体をのりだしてたずねてくるが、私にはなんのことをいっているのか、まったくわからなかった。
「昨日、バイトを無断欠勤したでしょ。心配していたんですよ。宮沢さんがそんなことをするなんて今までなかったし、想像もつかなかったから」
そうだ。そういえば、そうだ。
昨日は放課後、拉致されて矢野たちに監禁されていた。そのかんはバイトのことなど考えるよゆうなんてもちろんなかったし、屋上をでたあともほぼ無意識で家に帰っていったのだ。
アルバイトのシフトがはいっていること自体、まるで頭のなかになかった。一万三千円を一日でも早く稼がないといけないくせに、なんとものんきなものである。
なにやっているんだろうと自分で自分が情けなくなった。
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