第105話

 そんな一連があったからだろうか。丹波はその日、私の席にこなかった。


 前日は「おはよう」とあいさつをしにきたのに、今日はそれがない。


 もっとも昨日あんなことをいっておきながら、私のところにのこのここられても困る。


 おととい守るといいながら、昨日は関係ないとみんなのまえで高らかに宣言していた。


 そんなやつが安全地帯でだけ私に声をかけてこないでほしい。


 そういえば、丹波は昨日の昼の屋上で自分はケンカをするつもりがないのだと矢野にいっていた。この男は学校でトラブルを起こさずうまくやろうというのだろうか。


 考えなんてわからないし、わかりたくもない。


 どうでもいいが、ただただ腹が立つ。頭にくる。感情がおさまらない。


 私は自分の席から窓のそとを見た。


 丹波にとって私はそのていどの人間らしい。


 ようするにたすける価値もない赤の他人なのだ。


 けっきょくは、理子や天野くんや無関心な二十数名のクラスメートと変わらない。私のことをいじめはしないが、だからといって私としっかりかかわるわけでもない。


 みんな口では調子のいいことばかりいうだけだ。そのじつ、なにもしてくれない。


 それならば理子たちに対するように、丹波にも期待などせずに今までどおりの孤独な学校生活を送っていたほうが傷つかないぶん、いくらかましだ。

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