第75話
せめて一度教室に戻ってからとも考えたが、そんなことをすれば私の場合、絶対に決意が揺らぐ。らくなほうに流される。
あきらめよう。
あきらめた。
バカみたいに弁当箱をかかえたまま廊下を歩く。
教室の方面ではなく、トイレの先にある階段の方面にむかった。
四階、屋上とツーフロアぶん階段をのぼる。
四階から屋上にむかう階段は心なしかほかのフロアよりも薄暗いような気がした。
私の緊張がまったく落ちつかないまま、あっというまに最上部へついた。階段の先にわずかな踊り場があり、その先にぶ厚い鉄製の扉が待ちかまえていた。
屋上の扉の鍵は、うち鍵でロックできるタイプで、一度鍵をかければそと側からは絶対にあけられなくなる。
現状、鍵は縦にむいているので、あいているのだろう。私はこのままこの鍵を横むきにロックしてヤンキー集団をしめだしてやろうかとも考えた。もっとも、考えたところで実行にうつす勇気なんて私にはないのだが。
扉のまえからはそとの気配は感じられなかった。人がいるような気もするし、いないような気もする。ぶ厚い扉で遮断されているせいか、声がもれてくるわけでもないので、扉のまえに立ったところで確証がない。
まあ、だからこそこの屋上が矢野たちの絶好のたまり場になっているのだが。
私はドアに手をかける。
ごくり。
つばをのむ。
手が震える。
ひざが笑う。
怖い。
だが、あけなければいけない。
意を決した。
扉をあける。
重い扉がぎいとひらく。
そとの光と屋上の景色が目にうつった。もっとも空は曇っていて、今にも雨がふりそうだったが。
私は怖かったが、とくに驚きはしなかった。
屋上の光景は予想どおりといえば予想どおり。そんな感じだったからだ。
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