第74話

 担任は知らないだろうけれども丹波は今、教室にはいない。矢野たち不良グループに呼びだされて屋上でケンカをしているまっさいちゅうだ。


 もしかすると集団リンチがおこなわれているかもしれない。


 どちらにせよ、本人たちにしてみれば、超おとりこみ中というやつだ。


 そんななかに他人がのこのこと近づくことなんてできないだろう。


 私なんかが、くだらないことづけをつたえにはいるすきまなど屋上でおこなわれている事態のまえでは針の穴ほども存在しない。


「はあ」


 盛大なため息がでた。


 いかなければ、きっと私が怒られる。


 だが、もともとあそこは不良がたくさんたまっているのだ。そこで今は絶対なにかが起こっている。


 そんな現実を考えると、私は気持ちが重かった。


 いきたくない。


 本気でいきたくなかった。


 ばっくれようかとも思ったが、そんなことをしてしまえば、私は担任からの印象が悪くなる。


 いかなかった丹波ではなく、つたえなかった私がだ。


 ただでさえ私はひとりぼっちで誰もたすけてくれない学校生活を送っているのだ。これで担任にまで嫌われてしまっては、目もあてられない。


 せめてこれ以上孤立してしまう事態だけはさけたい。


 現状維持のためにも私は屋上に丹波を呼びにいかなければいけないようだ。

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