第50話
「あんたさ……」
もっともそれも口をひらかなければだ。
綺麗な顔の美少年は、その見た目からは想像ができないほど意外なくらいに口が悪い。ヤンキーだからしかたがないのか。
「宮沢初乃です」
とりあえず注意のために名のった。まるまる一日黙っていたので、声がかすれてしまった。
「あっ、そう」
金髪の少年は、私の名前になどたいして興味はないらしい。
もっともそれもとうぜんだろう。私はべつに顔がいいってわけじゃない。どちらかといえば残念なほうだ。スタイルだって決していいってほうじゃない。これもあきらかに残念だ。
彼氏なんて中学二年のときに一度、短い期間いたきりで、それ以来は浮いた話ひとつない。もっといえば高校に入学してからというもの、彼氏どころか友人さえいなく、あげくの果てには、毎日、矢野たち不良グループからのいやがらせを受けている。
なにもかもが残念なのだ。
「なんでいじめられてるの?」
そんな私がぐさりと傷つくようなせりふを転入生は吐く。
いきなりナイフで傷つけられた。そんな感覚だ。初対面で遠慮がない。
そもそもなんでただの転入生に私の事情や校内でのポジションの話などしなければいけないのだ。そんなことのためにこの男は私をわざわざ引きとめたのか。
私は表情を読まれたらしい。
「いや、おれ、転校してきたばかりだから、この学校のことぜんぜんわかんないから」
だから教えてほしい。
そういったニュアンスのせりふだった。
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