第27話
私のアルバイト先は、学校からだいぶ離れた場所にある全国チェーンのガソリンスタンドだ。
うちの学校では生徒のアルバイトはいちおう校則違反ということで禁止されているが、お金にかんするやむを得ない事情ということで私の場合、入学時に条件つきで理事長の特例をだしてもらった。
その条件のひとつというのが、学校のある場所から半径四キロ以上離れた場所でアルバイトをすることなのだ。
これには学校側としてのいいぶんがあった。
バイトをするなら、誰にもばれずにひっそりやれ。そういった圧力のようなものだった。
半径四キロというのは、わかりやすくいえば、人間の足で約一時間の距離である。とうぜん学校のある駅の圏内ではない。
駅も違えば足を運ぶこともすくないだろうというのが学校側の見解だった。ようするに、ほかの生徒がまねをしないよう、わが校の生徒として恥ずかしくないようにしろということなのだろう。
だから、うちの学校のほかの生徒たちの目にふれる可能性が極力ないところまで離れてアルバイトをしろというのが厳密な内容だ。
と、まあ、そんなわけで私のアルバイト先は学校からもけっこう遠い。
私はまず学校から駅まで歩き、そこから電車にのり、べつの駅でおりると、さらにそこからバスにのってアルバイト先にむかうのである。
交通費は全額アルバイト先が負担してくれるからいいものの、これが自腹だったら完璧に足がでている。アルバイトをする意味などなくなる。
アルバイト先は遅刻厳禁、無断欠勤ならば即くびとバイトに対するルール自体はきびしいが、そのへんはいたしかたがない。なにせ遊びじゃないのだ。仕事なのだ。
私は距離と交通費と自給とを照らしあわせて高校入学直後に決定した。なんとかそのあたりのバランスを考えたうえでの妥協案がこのアルバイト先のガソリンスタンドだった。
だから私は、その日もいつもとおなじルートでアルバイト先のガソリンスタンドへいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます