第16話

 私はおそらく転入生をじっと見つめすぎていたのだろう。彼がその視線に気づいたように、こちらを見た。私と目があう。視線がつながる。


「あわわわわ」


 心のなかであわてふためき目をふせた。机のおもてに顔を落として、しばし沈黙。


 それからゆっくり、おっかなびっくり視線だけをうえにあげる。


 私は再度、転入生の顔を見つめた。なんというか、見つめずにはいられないのだ。


 その転入生が目立っていたのは、彼の容姿だった。


 私だけでなくクラスじゅうの視線を集め、釘づけにするのもうなずける。それくらいに転入生は、私が今までかかわってきた男の子たちと明らかに違った。


 身長は百七十五センチに満たないくらいで、体型はやせ型。どちらかといえば小柄なほうだが、手足が長い。透きとおるような白い肌と身にまとった不思議な雰囲気が目を引いた。


 男の子の顔ははっきりいって、めちゃくちゃ綺麗だ。


 眉目秀麗(びもくしゅうれい)。


 明眸皓歯(めいぼうこうし)。

 

 面向不背(めんこうふはい)に焼肉定食……っていうのはちょっと違うか。


 とにもかくにも、おおよその男性をほめるための四字熟語が瞬時にいくつも頭にでるほど。かなり遠慮した表現で彼をいいあらわすのならば、ただひたすらうつくしい。カッコイイとかイケメンとか、そういった表現ではおさまりきらない。そんなふうにいえばわかりやすいだろうか。


 そしてどこかほんのちょっぴりワルのにおいがあるというか、影のある雰囲気だった。

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