第4話

 この学校は、はっきりいって世間でかなり優秀とされている。


 一度はいればよほどのことがないかぎり、大学までエスカレーター式で進級できる。


 おまけにうちの学校にはべつの敷地におおきな付属の大学病院まである。この学校の卒業生というだけで、その後の就職にだって有利になる。履歴書にだってはくがつく。だから高校からの途中入学は狭き門で、倍率はなんと私が入学した年では驚きの十七倍。定員九名のところに私をふくめた百六十数名の受験者が殺到した。


 それでも私はこの学校に入学しなければいけない理由があった。


 私の家は情けないほど貧乏だ。数年まえ父が勤めていた会社をリストラされ、それが原因で身体を壊し寝こんでしまった。おまけに精神までやられてしまった。うつになり、ふさぎこんでニート化した。


 今は専業主婦だった母が清掃員のパートをして家計をきりもりしている。このご時世では中年の両親に再就職の口はない。そんな現状だ。


 だから私が自腹で学費を払い、そのうえでぶじこの学校を卒業し、いい会社に就職しなければいけない。そんな思いで必死に勉強をし、なんとか合格することができたのだが、蓋をあけてみればこんな状況だ。


 そもそも合格者がすくないということは、各クラスにひとりかふたりしか途中入学者はいないということだ。おまけにこの学校はカリキュラムの関係で卒業までクラスがえもないということだった。


 左右のクラスではふたりずつの途中入学者がいるのに、私の場合、自分のクラスにいる途中入学者は完全に私だけ。つまりひとりきりなのだ。


 だから入学以来一年とひと月、私ひとりが毎日こんな目にあっている。

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