全てが終わった後
いつからだろうか、この屋敷もにぎやかになったのは。
そこれそ昔は俺一人だった。家でも疎まれ、局でも居場所のなかったあの頃。彼女に出会う前の、なんでも持っていたからこそ何も持つことのできなかった時期。
この世界は弱肉強食だ。強いものの恩恵に預かるものたちが数多く居ることも確かだが、それでも基本理念が弱肉強食であることに変わりはない。だからこそ、世界はここまで衰退し、俺はこうやって遠ざけられる。
強い力は世界を侵し、弱者たちの共栄圏は崩れ去った。本能にまで刻まれた恐怖なのだろう。今でも、俺に近寄りたがらない人の方が多いくらいだしな。
だからといって、俺が孤独だったかと言われればそれも否だ。
その始まりが彼女に出会ったことだったのは、今からすれば明らかなことだけれど、当時はそんなこと露にも思わなかった。彼女との出会いはそれは運命的で、だからこそこんな出会いなんてもう二度とないんだろうなって、本気で信じてた。
結局その予想は裏切られたわけだけど、その結果がこれなら悪くない。
俺の周りに集う彼女たちを見やる。
あやかしならば、人の死くらい笑って見届けるものだと思うんだがな。誰もがその顔に悲しみを浮かべ、涙を浮かべるものも少なくない。
見ろ、強者の筆頭であるあやかしが涙を流すのは滑稽だ、と常日頃言っていたやつまで泣いてやがる。こいつまで泣いてりゃ世話ねぇな。
別に悲しむことじゃないんだがな。この世界は弱肉強食かもしれない。あやかしたちは強いのかもしれない。確かに俺も強かったのかもしれない。それでも、なんにだって終わりはあるものなのだ。
強いとか弱いとか、そういうことじゃないものも世界には溢れているのだから。
でも、覚えていてくれるやつがいる。忘れないでいてくれるやつらがいる。人ってのは、それだけで救われるものなんだよ。あやかしならば、そんなことみんなわかってるはずなのにな。
まぁ、あやかしにも人にも変わらないものがあり、犬も歩きゃあ棒に当たるように、どうやったって避けられないものもある。そいつが悪さしてるってのもわかるんだがな。
『死』、あるいは『消滅』がその一つなら、『愛』だってその一つなのだろうよ。
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