第三幕 それは、混沌たる終焉の序章
第1話
物事には、始まりがある。だからこそ、終わりもある。逆に言うと、終わりがあるからこそ、また違う始まりを生む。
全ての物事は、終わることも始まることもないままに続いていくことは有り得ない。
ここにも
それでも、始まってしまったのだろう。その
俺は、自身のスマートフォンの画面を見ながら息をついた。どちらにせよ、俺たちが
スマートフォンの画面を見ながら直立不動の状態である俺を、
さて、どうするか。……いや、どうなるのか。
やるべきことは決まっていたのだが、どうにも気が進まない。
どちらにせよ、学校に行けば新しい動きがあるのは明白だ。ならば、今のうちにやっておくのが吉だろう。
そう思い、俺はスマートフォンからメッセージアプリを起動し、「
▽
いつも以上に重い足取りで学校へと向かう。
学校はいつもの
二年九組の教室で俺を待っていたのは、非常に
……俺が過敏に反応し過ぎたか。そう思って着席するものの、瞬間、俺は嫌な視線を感じて思わずそちらに目をやってしまう。
どうにも俺の感覚がおかしくなっているようだ。これが普段通り、通常営業であるというのに。
だが、これで何もないということは有り得ないということもまた、分かっていた。伊勢谷が俺に話しかけ辛いということも分かっていたのだ。
実際、自宅を出る前に送った瑠花へのメッセージに対して、反応はまだない。だが、既読であることは、アプリが知らせてくれている。なのにそれに対する返事はなかった。
今までが過干渉であったというのに、急にそれが
全ての謎は、文化祭に
五月頭の長期休暇を挟んで、文化祭準備は一層加熱するはずだ。各部活動、そしてクラス単位でも、模擬店や
模擬店は、いわゆる飲食物販売系とアトラクション系、そして展示物系の三つに分かれる。催し物は、バンド活動やステージにおけるクイズ大会など、一般的な文化祭と大差はない。
しかし、視聴覚室という名の広いホールにおいて行われる演劇はその限りでない。
普通、クラス演劇なんて
その理由は演劇部の創設時にまで
ともかく、この文化祭において俺たちは何かに巻き込まれることが予告されているのだ。もちろん、冗談の可能性が高いのだけれど。
それも、伊勢谷の文芸部へのアプローチによって
そして、今回の件によって、
……そういうのはやめにしたはずだったんだけどな。
そう思うと、俺はエナジードリンクの缶を開ける。プシュッ、という小気味いい音と共に、俺のスマートフォンが振動するのをポケットの中で感じる。
瑠花からの返事かと思って画面を見るが、そこに表示されていたのは違う人物からのメッセージであった。
▽
「……教室じゃなくていいのか」
「まあ、もうその必要がなくなっちまったからなぁ」
昼休み、俺が呼び出されたのは生徒会室であった。中心に鎮座する大きな机に座る俺と、その対面に座る生徒会副会長、
そしてその机を囲むようにして、数々の生徒会役員が俺たちに視線を向けていた。
……何これ、
「確かに、あの一件は明らかになった。あの教室でお前が俺に話しかけ辛いのも分かる。だけどどうしてこんな……、何ていうか……、圧迫感に
「そいつは、自分の胸に問いかけてみるんだな」
伊勢谷が言うが、全くもって心当たりがない。
「……本当にどういうことだ?」
「おいおい、何も知らないとは言わせないぞ。マスコミ部、部員NO,2さんよ」
言われて一瞬何のことかと思ったが、そのことによって思い出してしまった。自身が瑠花の魔の手によって、マスコミ部の暫定部員にされていることに。
「ちょっと待て。確かに俺は瑠花によってマスコミ部の一員だということになっている。だけど、あの件に関しては俺の全くの無関係だ。実際、どういうことなのか本人に聞いているが、返事がないんだよ」
そう言って、伊勢谷や周囲を見渡すも、相変わらず疑惑の目は晴れない。ああ、
だが、伊勢谷は肩を落とし、はあと息をついて言う。
「まあ、
信じてもらえたようで何より。俺は少し力を抜いた。
この前の謎解きの後、マスコミ部は無事に承認されてしまった。残念無念である。
マスコミ部の初の活動として、メールマガジンの配信が決まった、と瑠花から聞いたのはマスコミ部承認後、一日を待たずしてだった。試験導入らしいが、準備はほぼ
そして今日は、そのメールマガジンの配信第一回だった。朝の七時に配信されるというメールマガジンに、俺も登録をさせられている。まだ試験段階ではあるが、瑠花の人脈によってそれは広まっており、登録者も相当数いるとのことだった。
試験段階であり、最初の記事だ。内容としてもかなり一般的な、簡単なことを述べるだけに
『新高文化祭に激震!? 謎の予告状、生徒会に届く!』
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